発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-141

初年次教育におけるコミュニケーションプログラムの一例−鈴鹿医療科学大学における医療人底力教育の実践より−

[責任発表者] 福島 裕人:1
[連名発表者] 浅田 啓嗣#:1, [連名発表者] 山崎 領#:1
1:鈴鹿医療科学大学

目 的
 昨今の急速なグローバル化,少子高齢社会の進行による社会構造の変化を受けて,中央教育審議会(2012)は学士課程教育の質的転換について答申している。そこでは従来のような知識伝達型の授業ではなく,学生が主体的に問題を発見し解を見出していく能動的学修(アクティブラーニング)の重要性が指摘されている。このような流れと呼応して,近年初年次教育を導入する大学が増加している(河合塾,2010)。中でも,コミュニケーション能力の涵養は卒後あらゆる領域において求められており,初年次教育の目的の一つである。
鈴鹿医療科学大学では2014年度より従来の教養教育を改め,チーム医療に不可欠な協調性やコミュニケーション能力を備えた医療人の育成のため,1年生全員を対象に医療人底力教育を導入した。このプログラムは全学部学科学生混成クラスとし,能動的学修の手法を重視したプログラム構成である点や,全学の教員と事務職員混成の教職協働で指導にあたる点でユニークである。今回その一部であるコミュニケーションに関する授業を実施し,実施前後における社会的スキル得点と自由記述の検討から,今後のコミュニケーション教育のあり方について考察することを目的とする。
方 法
 1年生前期必修科目「医療人底力実践(基礎1)」(2コマ連続)において,コミュニケーションに関する授業を実施した(表1)。その主な目的は,将来のチーム医療の担い手となるべく多学科学生との交流を図り,コミュニケーション能力向上のきっかけとすることである。具体的な内容は,前半の90分でコミュニケーションに関する講義とその後6〜7名ずつのチームに分かれ,アイスブレーキングとしてワーク(ストップウォッチ)を実施した。休憩をはさんで,後半90分では引き続きチーム毎にワーク(駅伝大会/匠の里)を行った。なお,この授業は2クラスずつ並行して,計6週に亘り実施されたため,学生への解答の漏れなどを考慮して前半の3週では駅伝大会,後半の3週では匠の里を実施した。実施前に,学生のコミュニケーション能力を測定するためKISS-18(菊池,1988)への記入を求めた(5件法)。終了後にはKISS-18の項目から抽出した7項目と新たに作成した3項目について「(今回の課題では)〜することができた」という形式に修正し,計10項目対して記入を求めた(5件法)。
※今回用いた3種のワークは全て(株)プレスタイムによるもので,課題解決のためのグループワークの手法である。
結 果
 回答の得られた620名を対象に分析を行った。授業実施前におけるKISS-18合計の平均は56.9点(SD±9.5)であった。次に,実施前後でのKISS-18合計の平均についてt検定を行ったところ,全ての項目において有意差がみられた(ts(619)=8.6〜31.5,ps<.001,表2)。さらに,実施内容(駅伝大会/匠の里)と実施前後におけるKISS-18合計の平均についても検討した。なお,授業の実施順と実施後の合計点との間に非常に弱いながらも有意な正の相関が認められたため(ρ=0.09,p<.05)実施順を共変量とした共分散分析を行ったところ,後半に実施した匠の里の方で合計得点が有意に高かった(F(619)=13.9,p<.001)。
考 察
実施前でのKISS-18の平均は菊池(2008)とほぼ同様であった。実施順序との相関はみられず,プログラムの進行に伴う社会的スキルの上昇は確認できなかった。しかし,実施前後のKISS-18各項目の得点の比較からは,本課題に対してはコミュニケーションのスキルを比較的発揮できていたことがうかがえた。さらに実施後の学生の感想からも「楽しかった」「全員で一緒に考えることができた」など非常に肯定的であり,人気の高い授業の一つであった。今後はこのような講義をより入学初期の段階で実施するなど互いの交流を促進させながらコミュニケーション能力の涵養を目指し,半期終了後には学生自身が変化を実感できるような授業展開が求められる。そして将来チーム医療の中で互いの専門性を尊重しつつ,協働して主体的に職務に関わることのできる医療人の育成に向けて,更なる改良が望まれる。

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