発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-135

保育系実習におけるリアリティショック(3) 実習ストレス・GHQ12との関連

[責任発表者] 濱田 祥子:1
[連名発表者] 松田 侑子:2, [連名発表者] 設楽 紗英子:3
1:広島大学, 2:弘前大学, 3:作新学院大学

目 的
 保育系学生の職業的発達に関する研究を概観すると,保育者養成課程に入学し,保育者として働くに至るまでの大きな契機として挙げられるのが「実習」であり(神谷, 2009; 森野他, 2011; 仙崎・鈴木, 1990),現場での直接的経験は,特に保育者としての効力感に影響していることが繰り返し指摘されてきている(小薗江, 2013; 三木・桜井, 1998; 森, 2003)。こうした実習での経験は,時に「理想と現実の相違」である「リアリティショック(Reality Shock; 以下RS)」を伴い,学生に葛藤をもたらす。保育系実習では,こうした相違を経験しながらも,「保育者になる」という意識を維持し自己効力感を高める者が,保育者として成長・適応していけるとされ(小薗江, 2009; 谷川, 2010),これが入職後の保育にも影響していることから(西坂, 2002; 三羽, 2008),実習におけるRSに基づいた支援の構築は,学生のキャリア形成や保育の質の向上においても重要であると考えられる。
本研究では,設楽他(2015)で作成した尺度の妥当性を検討することを目的とする。RSは,ストレス過程の観点から捉えられることもあり(松永他, 2014; 水田, 2005),基準関連妥当性の確認のために,実習ストレス尺度(林, 2012)を用いる。実習ストレスと保育系実習RSとの間には正の相関があることが予想される。また,保育系実習RSがどのようなストレス反応をもたらすのかを明らかにすることも視野に入れ,実習中の精神的健康との関連を探索的に検討することとする。
方 法
調査時期:2014年7月
調査対象者:関東地方にある保育者養成の四大1校・短大2校,中国地方にある保育者養成の四大1校・短大1校で,初めての保育系実習を終えた大学生計430名(女性411名,男性19名,平均年齢19.59±1.11歳)である。
調査内容:(1)保育系RSに関する項目:RSを感じる対象についての予備調査(松田他, 2015)の結果を踏まえて,収集された66項目5件法である。本研究では,すでに設楽他(2015)における因子分析の結果抽出された9因子32項目を分析の対象とする。(2)実習ストレス尺度(林, 2012):保育所実習でのストレスに関する24項目5件法である。「保育技術の不足」「保育者との人間関係」「多忙感と身体疲労」の3因子で構成されている。(3)日本版GHQ精神健康調査票12項目版(GHQ-12; 中川・大坊, 2013):回答は4件法で求め,採点方法は,各項目で精神的に健康とされる側に回答すると0点,不健康とされる側に回答すると3点が与えられる。つまり,得点が高い方ほど精神的健康度が低いことを意味する。また,本研究の教示では実習期間中の状態に関する回答を求めた。
結 果
 まず,実習ストレス尺度の因子構造を確認したところ,オリジナルと同様の3因子から構成されることが確認された。二重負荷を示しているもの,因子負荷量が低いものは除き,19項目を以降の分析では用いることとした。保育系実習RS,実習ストレス,GHQ12の尺度間の関係性を明らかにするため,相関分析を行った。その結果,保育系実習RSの9因子と実習ストレス3因子との間には,大部分において正の有意な相関が見出され,「学習の機会」のみ負の関係を示した。GHQとの間には,「保育現場」「連携の重要さ」以外の因子において有意な相関が認められた。この内,「学習の機会」のみは負の関係を示した(Table1)。

続けて,保育系実習RSの各因子のうち,特に精神的健康に影響を与えているものを明らかにするため,RSを独立変数,GHQを従属変数とした強制投入法による重回帰分析を行った。その結果,「子どもとの関わりの難しさ」「職業適性の認識」から正の影響(β=.18, p<.01; β=.42, p<.01)が,「学習の機会」から負の影響(β=-.17, p<.01)が認められた(R2=.37, p<.01)。
考 察
 本研究においては,設楽他(2015)で作成した保育系実習RS尺度の妥当性を検討し,精神的健康に及ぼす影響を明らかにした。その結果,実習に対するストレスが高い者程実習現場でRSを感じていることが全体的に示された。これにより,基準関連妥当性を確かめられたと言える。また,重回帰分析の結果から,特に子どもに対する関わりが思ったようにいかなかったり,保育の仕事に思ったより向いていないと感じたりすると,精神的健康が低下することが示された。大村(2011)によると,保育者を志望する動機は,「子どもとの関わり」「保育者への憧れ」に整理される。つまり,子どもと関わりたいとか,保育者になりたい・向いていると思うといった,保育者を志望する根幹的な部分が現場で挫かれることは,精神的健康により大きな影響をもたらすのかもしれない。他方,思った以上に色々学べるというような経験は,精神的健康とポジティブに関連しており,RSの特徴については更なる検討が必要である。
(HAMADA Shoko, MATSUDA Yuko, & SHITARA Saeko)

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