発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-129

日本の中高生のライフ・スクリプトに関する予備的検討

[責任発表者] 川崎 采香:1
[連名発表者] 上原 泉:1
1:お茶の水女子大学

目 的
ライフ・スクリプトとは、「文化的に共有された、典型的な人生のライフイベントに関する知識(Rubin & Berntsen, 2003)」のことをいう。これは、思春期以降に発達すると考えられており、自伝的記憶を形成する際に影響を与えることが近年の研究から示されている。しかし、日本ではライフ・スクリプトの知見が僅少で、しかも発達初期の思春期を対象とした研究はほぼなく、発達過程は明らかではない。そこで、本研究では日本における中学生から高校生の時期におけるライフ・スクリプトを検討する。
方 法
 都内の公立学校に通う中学生192名(男子93名、女子99名)、高校生143名(男子74名、女子69名)を対象とした。同性の典型的な新生児が成長することを想像し、一般的な人生で経験すると考えられる最も重要な出来事10個について質問紙で回答を求めた。
結 果
 分類カテゴリーを決めたあと、筆者1名と目的を知らない研究者が約30%のデータについて分類を行った。不一致の部分は話し合いで決め、残りのデータは同じ筆者がカテゴリー分類を行った。その結果、中学生で44項目、高校生で50項目のカテゴリーが抽出された。表1は、高校生が形成したライフ・スクリプトの上位10項目を示す。言及頻度の順位は異なるものの、高校生と中学生のカテゴリーは類似していた。出来事内容も、高校生と中学生では類似しており、いずれにも日本独自の内容(けんか、成人式、高校受験など)が含まれていた。男女別に分類したライフ・スクリプトと日本人の成人が形成したライフ・スクリプト(Janssen, Uemiya and Naka, 2014)の上位10項目の重なりを調べると、男子中学生(7項目)より女子中学生(9項目)のほうが、男女共に中学生より高校生のほうが、重なりが大きかった。
図1は、高校生が形成したライフ・スクリプトに含まれる出来事の感情ごとの年齢分布を示す。全出来事のうち中学生の54.56%、高校生の61.52%が11〜30歳の出来事だった。海外の先行研究と同様に、ポジティブ感情を含む出来事が多く含まれた。また、ポジティブ/ネガティブの両方の感情を含む出来事が全出来事の中で、中学生は34.78%、高校生では38.22%を占め、海外の先行研究と比較し、高い割合となった。さらに、中学生、高校生共に、女子より男子の方が、ポジティブ感情を含む出来事が多く、両方の感情を含む出来事が少ない傾向が見られた。
考 察
 中学生、高校生が形成したライフ・スクリプトは、全体を通して共通項目が多かった。また、中学生、高校生共に、欧米圏とは異なる出来事(けんか、受験)が含まれた。特に、“けんか”は中学生、高校生、また男女別にしても上位項目に含まれた。これは、皆が経験する出来事であるにも関わらず、海外のライフ・スクリプトには含まれない出来事であり、日本人が形成するライフ・スクリプトの特徴である可能性が示唆された。さらに、ポジティブ感情を含む出来事が大半を占めるとする先行研究の知見とは異なり、本研究ではネガティブ感情を含む出来事が比較的多く含まれた点も、日本の特徴として考えられる。また、中学生、高校生が記述した出来事の大半は、30歳までの時期に経験すると予想された。10代後半から30歳頃の出来事がライフ・スクリプトに含まれやすいと言われているが、本研究内での割合は特に高く、中高生がライフ・スクリプトの形成の発達途中の時期である可能性も考えられる。今後は、より幅広い年齢を対象に調査を行い、ライフ・スクリプト形成の発達過程について検討し、自伝的記憶との関連について考察していきたい。
引用文献
Jassen, S.M.J., Uemiya, A.,& Naka, M.(2014). Age and gender effects in the cultural life script of Japanese adults. Journal of Cognitive Psychology, 26, 307-321.
Rubin, D.C.,& Berntsen, D.(2003). Life scripts help to maintain autobiographical memories of highly positive, but not highly negative, events. Memory & Cognition, 31, 1-14.

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版