発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-127

女子大学生の自立と将来適応感に母親及び父親との心理的距離の「組み合わせ」が与える効果

[責任発表者] 堂野 恵子:1
[連名発表者] 堂野 佐俊:2
1:安田女子大学, 2:山口学芸大学

本研究の目的は、前研究(堂野,2015)に続き、個性化と社会化の統合期(堂野,2009)に入る女子大学生の自立と将来への適応感に、母親及び父親との心理的距離が与える効果を検討することであった。前研究では、母と父間の効果性の差異を検討するために親別の分析を行った。しかし現実には、娘は両者が合わさった「全体として」の心理的距離の影響を受けていることは十分考えられる。そこで本研究では、対母及び対父との各心理的距離(L(近)、M(中度)、H(遠))の「組み合わせ」を考え、この心理的距離パターン(9条件)が「親全体として」自立と将来適応感に与える効果について検討する。【検討1】パターン中、最も効果性が高いのはどの条件か。【検討2】パターンは、対母と対父との心理的距離が一致する条件(L-L、M-M、H-H)と他の不一致な条件に大別される。前者は一致しているがゆえに「親全体として」の心理的距離の傾向性は明瞭であり、自立と将来適応感に与える効果は、青年の自立-心理的距離に関する代表的モデル(平石,2014)の「統合論」からはM-Mが、「結合論」からはL-Lが、「分離論」からはH-Hが、最も高くなると予測される。この検討を行う。【検討3】不一致条件には、母への心理的距離の方が父への心理的距離よりも近い「母近条件」(M- H、L-M、L- H)と、逆である「父近条件」(M-L、H-L、H-M)がある。ところで従来、娘に与える影響性は娘-母関係の方が娘-父関係よりも強いとされてきたが、父についても娘との親密性の増大が指摘される昨今、その自立や将来適応感に与える効果には差異がないかもしれない。これを母近条件と父近条件の比較から検討する。【検討4】不一致な場合には、「親全体として」の心理的距離の傾向性が明瞭な一致の場合に匹敵する効果はないのであろうか。これを一致3条件(L-L、M-M、H-H)と不一致2条件(母近、父近)の比較から検討する。
方 法
調査対象者・調査時期:女子大学生74名、2012年6月。
調査内容:1.心理的距離:母子密着尺度(藤田, 2003)を一部変更、6件法30項目。父用は質問項目の母を父に換えて使用。2.自立性尺度(菱田ら, 2009)、5件法27項目。3.適応性尺度(大久保, 2005)を一部変更、4件法29項目。
結 果 と 考 察
調査対象者の母及び父との心理的距離について各々、平均±0.5SDを基準にL、M、Hを判定し、両者の組み合わせから、「親全体として」の心理的距離パターン9条件群を設定した。条件別の自立得点(1〜5点)と将来適応感得点(1〜4点)をFigure 1に示す。【検討1】自立得点と将来適応感得点別に、距離感の組み合わせ9条件に関する1要因分散分析を行ったところ、ともに有意ではなかった。従って心理的距離パターン中、自立と将来適応感に最も効果性が高いのはどの条件かについては確かめることはできなかった。【検討2】「一致3条件」に関する1要因分散分析の結果、自立は有意傾向(F(2,32)=2.52, p<.10)、将来適応感は有意(F(2,32)= 5.37, p<.01)
であり、下位検定の結果ともにL-LはM-M及びH-Hより有意に低かった。前研究(堂野,2015)の親別の分析では、自立と将来適応感ともに心理的距離が「L」の場合に有意に高くなり、「結合モデル」論に与する結果であった。しかし本研究の母と父との心理的距離の組み合わせによる「親全体として」の距離の効果からの検討では、むしろ「L-L」の場合には有意に低くなり、結合論よりも「分離論」に与する結果となっていた。親との「個別」の関係性では、それぞれ心理的距離が近い方が娘にとって結合感からくる情緒的安定感は得られやすい。しかし、両者が組み合わさった「全体として」の関係性となると、L-Lという両親との圧倒的な近さ・結合感は青年後期の娘にとってはかえって重苦しいものとなりやすく、それが、両結果の違いをもたらしたものと考える。【検討3】自立と将来適応感について、「母近条件」の3条件間、「父近条件」の3条件間にはそれぞれ有意差がないので、まとめて(図中の「全体」)比較した。自立については母近条件と父近条件で有意差はなかったが、将来適応感については母近条件の方が父近条件より有意に高い傾向(F(1,37)=3.66,p<.10)を示した。つまり、対母と対父で心理的距離が不一致な場合は、母への心理的距離が父へのそれよりも近い場合の方がその逆に比べて娘の将来適応感がよいことになり、ここでは母との結合の効果性が示唆された。【検討4】一致3条件と不一致な母近条件・父近条件の計5条件に関する1要因分散分析の結果、将来適応感は有意(F(4,69)=3.68, p<.001)であり、下位検定の結果、H-Hと母近条件は差がなくともに有意にL-Lより高かった。つまり不一致でも「母近」の場合には、両親に対する距離感が強く高い適応感を示すH-Hに匹敵する効果性が見出された。しかし自立では、この傾向は見出されなかった。

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