発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-111

ICTサービスに対する情緒的結びつきの形成について

[責任発表者] 石川 知夏:1
[連名発表者] 中茂 睦裕#:1, [連名発表者] 大野 健彦#:1
1:日本電信電話サービスエボリューション研究所

目 的
情緒的結びつき(affectional tie)はヒトやモノに対して形成されることが明らかにされている[1].例えば,ユーザは情緒的結びつきが形成されたモノを長期的に利用するために丁寧に扱ったり,修理を行う傾向があることが示されている[2].また,モノは時間や空間を通して人々を結びつけたり引き離したりするだけではなく,個人の生活を充実させるための目標を表現したり,見つけたりするためにあることも示されている[3].
本研究では,ICTサービスの長期的な利用を促進するために,情緒的結びつきに着目し,ICTサービスに対して情緒的結びつきが形成される要因や過程を明らかにし,情緒的結びつきが形成されるために注力するべき点について検討する.
課 題
ヒトやモノへの情緒的結びつきは,前節で示したように複数の効果が明らかになっている.しかし,情緒的結びつきが形成される要因については十分に体系立てられているとは言えず,形成される過程についても研究は十分に行われていない.さらに,ICTサービスにおける情緒的結びつきについては研究がほとんど行われていない.
方 法
 調査対象者36名に対して長期利用を行っているモノとサービスについて入手経緯や利用方法・所持している意味などをインタビューした.
結 果
インタビューを分析した結果,情緒的結びつきが形成されるモデルを立案した(図1).情緒的結びつきを形成する要因は「感性・本能」「利便性・有用性・経済性」「体験・記憶」の3つであり,それぞれの要因は,口コミを見るなど入手する以前から生じる.また,「感性・本能」「利便性・有用性・経済性」は入手時に重要視されるが,最初はキレイだったが劣化が生じるなど,利用を行うにつれてその要因は重要視されなくなる.また,「体験・記憶」は入手時に重要視され,利用をするにつれて蓄積される.そして,「体験・記憶」を繰り返すことによって,情緒的結びつきが生じる.つまり,対象の利用を繰り返すことによって対象の挙動や特性などへの理解が進む.理解が進むことによって対象を「わかったつもり」になり,情緒的結びつきが形成される.
また,情緒的結びつきを形成する過程はモノとサービスで同様だが,モノに対しては情緒的結びつきが形成されやすく,サービスに対しては形成されにくいことが明らかとなった.
考 察
ICTサービスへの情緒的結びつきを形成する方法を検討する.
近年,サービスを有形と使役の統合体であるとして捉えるようになったが,ICTサービスは,有形と使役と単純に2分割することができない.本研究ではICTサービスは,デバイスなどの空間を占め,形をもつ「有形」と,キャラクターやユーザの操作によって変化する画面といった外観を認識することができるが,空間を占めていない「可視使役」と,通話ができる,買い物ができるといったユーザが五感で認識することができない「使役」の3つの要素によって構成されていると捉え,情緒的結びつきを形成するためには可視使役を利用し,体験・記憶をデザインすることが重要だと考える.
 可視使役である企業キャラクターの運用目的は認知促進や売り上げ拡大とされている[4].しかし,同様の運用目的であるSNSの活用については,評価指標がいくつか存在しているのに対して,企業キャラクターには明確な評価指標については確立されていない.例えば,ジェットスター航空[5]は,ブランディングやキャンペーン周知のため様々なSNSを運営し,ファン数や誘導数などを評価指標としている.一方,公式キャラクターについてはキャラクター専用のSNSアカウントを取得しているにも関わらず,運用はされておらず,ユーザの目に触れる機会がほとんどない.これらは株式会社すき家本部でも同様の事例がみられる.
これは,可視使役が直接的な売り上げに貢献する明確な指標を導出することが困難であるためであると考えられる.今後,可視使役への情緒的結びつきによる効果の測定や運用方法などの指針の導出を行いたいと考える.
引用文献
[1] Bowlby,J. (1982) Attachment and loss,vol.1.Attachment. New York:Basic Books.
[2] van Hemel,et al.(1997) Eternally yours: Visions on product endurance, Rotterdam,The Netherlands: 010.
[3] Csikszentmihalyi,et al. (1981) The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self, Cambridge University Press.
[4] http://www.gentosha-mc.com/column/detail28/
[5] http://www.jetstar.com/jp/ja/home
[6] http://www.sukiya.jp/

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