発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-109

日本語版Trypophobia Questionnaire (TQ-J) の作成

[責任発表者] 今泉 修:1,2
[連名発表者] 古野 真菜実#:1, [連名発表者] 日比野 治雄:1, [連名発表者] 小山 慎一:1
1:千葉大学, 2:日本学術振興会

目的
 蓮の種や蜂の巣のような穴や物体の集合に対する強い嫌悪反応はTrypophobia (トライポフォビア) と呼ばれる (e.g., Cole & Wilkins, 2013)。Cole & Wilkins (2013) の予備調査では成人の約16%にトライポフォビアが見られることが報告されているが,トライポフォビアの機序や個人差を実証的に検討するには心理測定尺度が必要である。そこでLe, Cole, & Wilkins (2015) はトライポフォビア傾向を測るTrypophobia Questionnaire (以下TQとする) の開発を試み,信頼性と妥当性について検討している。本研究では,日本語版TQ (以下TQ-Jとする) を作成して信頼性と妥当性について検討した。

方法
 項目作成 原著者から翻訳の許可を得た後に,第一著者がTQを日本語に翻訳し,研究内容に無知な日英バイリンガル2名が逆翻訳した。逆翻訳版とTQの整合性を原著者が確認したうえでTQ-Jの項目を完成した。表1に記載の17項目にダミー項目「笑い飛ばしたくなる」「心が落ち着く」が加えられた。各項目は「まったく感じない」「わずかに感じる」「やや感じる」「かなり感じる」「極めて強く感じる」のいずれかで回答され,それぞれに1-5点が与えられて合計点が算出された。ダミー項目は分析から除外された。
 回答者 インターネット上で調査協力を募るサービス (Yahooクラウドソーシング) を用いて,匿名の407名が調査に回答した。欠損値があった者と,回答時間が平均値の上下2標準偏差の範囲を逸脱した者は分析から除外された。有効回答は315名であった (女性110名,平均39.37±9.37歳)。
 手続き TQの手続きに従い,画面に「トライポフォビアを引き起こし得る画像を見たときに,どう感じるかをお答えください」という序文と例として蓮の種と蜂の巣の画像が呈示された。次の画面でTQ-Jが表示された。
 続いて,収束的妥当性を検討するために画像に対する嫌悪感の評定課題を行った。トライポフォビア画像 (穴が多数開いた物体。蓮の種など),中性画像 (穴が一つ開いた物体。ギターなど),不快画像 (不快情動喚起画像。汚物など) の各20枚が,無作為順で1枚ずつ呈示された。画像の下部に「非常に嫌悪を感じる (-4点)」から「非常に魅力を感じる (4点)」までの9段階尺度が呈示された。これらの画像は,原著者から許可を得たうえでLe et al. (2015) から転用された。
 最後に,弁別的妥当性を検討するために恐怖症尺度開発でよく扱われる特性不安を (e.g., Ost, 2006),State Trait Anxiety Inventory (Spielberger, Gorsuch, & Lushene, 1970; 以下STAIとする) を用いて測定した。
 再検査信頼性を検討するために,2週間後に上記315名へTQ-Jへの再回答を依頼した。回答者から身元不明者を除いた127名 (女性43名,平均39.83±9.35歳) を有効回答とした。

結果
 因子構造 主因子法とプロマックス回転による因子分析により2因子が抽出された (因子1: 固有値9.75, 説明率57.34%,因子2: 固有値1.26, 説明率7.40%)。因子1の固有値が著しく高く,TQ-JはTQと同様に1因子構造と解釈された (表1)。
 信頼性 Cronbach’s αは.95であった。初回検査と再検査との間に強い正の相関が認められた (Pearson’s r = .77, p < .01)。
 妥当性 収束的妥当性を検討するために,各画像群に対する平均嫌悪感評定値のそれぞれとTQ-Jとの相関を分析した。トライポフォビア画像への評定値はTQ-Jと強い負の相関関係にあり (r = -.61, p < .01),中性画像への評定値はTQ-Jとほぼ相関せず (r = .07, p = .21),不快画像への評定値はTQ-Jと弱い負の相関関係にあった (r = -.31, p < .01)。一方,弁別的妥当性の検討ではSTAIとTQ-Jとの間に弱い正の相関が認められた (r = .26, p < .01)。

考察
 本研究ではTQの日本語版であるTQ-Jを作成し,信頼性と妥当性を確認した。その結果,TQ-Jでは高い信頼性とTQと同様の1因子構造が認められた。一方,TQ-Jは不快画像の嫌悪評定やSTAIとの間に弱い相関が認められたのに対し,TQは不快画像の嫌悪評定やSTAIと無相関であるなど (Le et al., 2015),一部の結果に相違が認められた。TQとTQ-Jの相違について,今後は文化差や他の種類の嫌悪との関連も検討する必要がある。

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