発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-106

動物に対する感情・態度尺度の作成

[責任発表者] 淡路 実紀:1
[連名発表者] 谷内 通:1
1:金沢大学

目 的
 動物は,コンパニオンアニマルとして,食の対象として,あるいは健康や生命に対する脅威として人と関わりを持っている。また,時には,鯨食の賛否などの集団間の意見の対立を引き起こすこともある。このような対立の背景には,動物に対する食の感覚や知性の評価などにおける心理学的な水準での相違が関係していると考えられる。意見の異なる集団間の相互理解には,動物に対するどのような感情・態度において相違が生じているのかを客観的に示すことが必要であると思われる。しかしながら,動物に対する感情・態度については,知能の高さや親近性に関するものなどがあると思われるが,客観的に感情・態度を示した研究はまだ存在しない。
 淡路・谷内(2013)では因子分析による態度・感情の抽出を試みたが,動物3種(イヌ,カラス,ウナギ)のみを評価対象動物に用いたため,多様な態度・感情を十分に抽出することができなかった。そこで本研究では,評価対象動物と質問項目の追加し,人が動物に対して抱く基本的感情・態度を客観的に示した上で,これらの感情・態度を測定するための尺度を作成することを目的とした。
方 法
 参加者 心理学を専攻する大学生57名(男性19名,女性38名,平均年齢20.8歳)。
 質問紙 動物の学習能力や人に対する社会性の視点を取り入れ,合計99の質問項目で構成した。回答は,「そう思わない」,「あまりそう思わない」,「ややそう思う」,「そう思う」の4段階に設定した。評価対象動物は,イヌ,カラス,ウナギに加え,キンギョ,カエル,チョウ,ハチ,ミミズ,イルカ,ハト,カブトムシ,ペンギン,ウシ,カメ,ヘビ,チンパンジーの合計16種とした。同じ参加者が,各動物について99の質問項目に評定した。
 調査手続き エクセルファイルで質問紙を作り,参加者に自宅または大学で入力してもらった。回答する動物の順序は参加者間で相殺した。
結 果
 因子分析は最尤法とプロマックス回転を選択した。因子負荷量.3以上の項目を採択し,因子は4項目以上を含むことを基準に採択した。因子分析の結果, 心的能力,親近性,回避,非食対象,興味,保護,不活発,不衛生,有益性,神秘性の10因子が抽出された。
 尺度作成のため,各因子から因子負荷量の上位4〜5項目の合計48項目を採択し,因子分析により10因子が再度抽出されるかを確認した。また,内的整合性を検討するために各因子のα係数を算出した。因子分析の結果, 最初の調査と同じ10因子が抽出されたが,神秘性の因子の中に不活発の因子の項目が1項目混ざったので,この項目を不採択とした。47項目に対して因子分析を行ったところ,因子と含まれる項目が最初の調査と一致する結果を得られた。最終的に採択された因子と質問項目は次の通りであった。

心的能力「悲しみを感じる心を持つ」,「喜びを感じる心を持つ」,「未来について考える」,「考える力がある」,「人の考えていることがわかる」(α=.895)。
食対象 「食べたくない」,「食用にならない」,「おいしい」「食べたら栄養がある」,「食べてはいけない」(α=.922)。
回避 「見つけたら駆除すべきだ」,「世の中からいなくなって欲しい」,「迷惑だ」,「見たくない」,「怖い」(α=.867)。
親近性 「見ていると嬉しい気分になる」,「元気をくれる」,「安らぎを与えてくれる」,「遊び相手になる」,「触ってみたい」(α=.899)。
興味 「調べてみたい」,「生活の仕方に興味がある」,「体の仕組みに興味がある」,「持っている能力に興味がある」(α=.887)。
不衛生 「汚い」,「くさい」,「まわりを汚す」,「病気の感染源になる」,「触れてしまったらすぐ手を洗いたい」(α=.831)。
保護 「絶滅の危険がある」,「貴重だ」,「珍しくない」,「保護が必要だ」,「生きる環境を守るべきだ」(α=.807)。
有益性 「役に立つ」,「環境に良い影響を与える」,「良いことをもたらしてくれる」,「人のために働く」,「働き者だ」(α=.770)。
不活発 「のろまだ」,「やる気がない」,「なまけ者だ」,「大人しい」(α=.725)。
神秘性 「縁起が良い」,「神秘的だ」,「殺すとたたりがある」,「不思議な力がある」(α=.708)。
考 察
人が動物に対して持つ態度・感情には,少なくとも心的能力,親近性,回避,非食対象,興味,保護,不活発,不衛生,有益性,神秘性が存在することが示された。しかし,4項目未満で不採択となった第12因子には,動物の美しさや格好よさを示す項目が含まれたことから,これらを表す感情・態度を含め,抽出された感情・態度以外のものが存在する可能性が考えられる。より多様な質問項目について,より多様な動物を対象とした再検討が必要だと思われる。
作成された尺度では,各因子ともα係数が.7以上であり,最低限の内的一貫性は確保されたことから,動物に対する感情・態度を測定するための心理尺度として使用できると考えられる。今後,特定の動物を巡って意見が対立する集団間に本尺度を適用し,両者がどのような感情・態度において異なるのかという問題を明らかにする上での有効性を検討する必要がある。
引用文献
淡路実紀・谷内通(2013)人が動物に対して抱く基本態度・感情に関する検討—質問紙による基本態度・感情抽出の試み—.心理学の諸領域, 2, 56−57.

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版