発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-104

創造的アイデア生成における他者の批判への接触の効果

[責任発表者] 田中 優子:1
[連名発表者] 坂本 康昭#:2, [連名発表者] 曽根原 登#:3
1:情報・システム研究機構, 2:Stevens Institute of Technology, 3:国立情報学研究所

目 的
 クラウドソーシングとはcrowdとoutsourcingを組み合わせた造語で,人々が情報通信技術(ICT)を通じて集合的に取り組むメカニズムのことである(Howe, 2006)。個々人は割り当てられた小さなサブタスクを遂行しながら,全体として大きなタスクを達成する。本研究では,創造的問題解決を集合的に行うクラウドソーシングシステムとして,CONSIDER(Crowdsourced ONline System for IDEa Radiation)を開発した。このシステムの特徴は他者の批判的思考を活用する点である。従来は,Osborn(1953)のブレインストーミング手法のように,創造的発想において批判は保留されるべきものととらえられてきた。一方で,創造的問題解決プロセスには批判的に考えるプロセスが重要であると考える立場もある。本研究では,集合的創造的アイデア生成に対する他者の批判の効果を検討することを目的とし,CONSIDERに2種類のデザインを設定し実験を行った。

方 法
参加者 大学生および社会人238名(男子141名,女性97名,平均年齢23.7歳)がインターネット経由で参加した。
トピック 参加者全員に「インターネット上の間違った情報や嘘の情報がもたらす悪影響を減らすにはどうしたらよいか」という問題を共通して提示し,解決策について創造的なアイデアを生成,批判,改善,または評価するよう求めた。
システムデザイン CONSIDERは大きく下記の4つのフェーズから構成される。
Crowd 1(生成):上記の問題の解決策について,概要,方法,利点に対応する3つの空欄にアイデアを記入した。
Crowd 2(批判):ランダムに提示されるCrowd 1のアイデアの問題点を論理的に指摘するよう求められた。
Crowd 3(改善):アイデア(Crowd 1)と対応する問題点(Crowd 2)のペアをもとに新たなアイデアを記入した。
Crowd 4(評価):Crowd 3で生成されたアイデアについて実用性と新規性についてそれぞれ7件法で評価した。

実験計画 実験条件(CTデザイン)の対象条件として批判を用いないデザインを設定した(BSデザイン:ここではCrowd 2の課題をCrowd 1と同様に新たなアイデアを独立に生成する課題に差し替えた。よってCrowd 3の課題は,Crowd 1およびCrowd 2で生成されたアイデアのランダムなペアを元に新たなアイデアを生成する課題となった。このような異なるアイデアを組み合わせる手法はブレインストーミングの手法と類似する)。Crowd 4では,両デザインで生成されたアイデアを混合呈示しダブルブラインドで評価した。

結 果
 最終的にCrowd 3で生成されたアイデア数は,CTデザインで141個,BSデザインで171個であった。Crowd 4の評価値(実用性・新規性)を用いて,アイデア全体,上位25%,下位25%それぞれにおける両デザインの比較を行った(図)。
全体 最終的に得られた全アイデアを対象とし,デザイン(CT, BS)の効果について実用性と新規性についてそれぞれ一要因分散分析を行った結果,CT(M = 4.39, SD = 0.92)で生成されたアイデアの方がBS(M = 4.04, SD = 1.23)と比べ実用性が高かった(p > .01)。
上位25% 各デザインで生成されたアイデアの上位25%を対象に実用性と新規性についてそれぞれ一要因分散分析を行った結果,いずれにおいても両デザインに有意差はみられなかった。
下位25% 同様に下位25%のアイデアを対象に実用性と新規性についてそれぞれ一要因分散分析を行ったところ,実用性においてデザインの主効果が有意であり,CT(M = 3.29, SD = 0.38)で生成されたアイデアの方がBS(M = 2.22, SD = 0.45)と比べ実用性が高かった(p > .001)。

考 察
従来のブレインストーミング手法では「批判」は推奨されないものとされてきた。しかし本研究の結果より,批判はアイデアの新規性を妨げることなく,実用性という質を高める効果があることが示された。特に,批判を取り入れることでアイデアの実用性の底上げに寄与している。この効果の背景には,クラウドソーシングによる非対面式の問題解決システムによって,従来創造的発想の妨げとなると考えられてきた評価懸念や権威効果のような抑制要因の影響が回避された可能性が考えられる。今後のICTデザインの工夫により,他者の批判を積極的に活用していくことが期待できる。

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