発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-101

若年者の情動を伴う自伝的記憶に関する研究

[責任発表者] 石原 治:1
1:静岡福祉大学

自伝的記憶と感情に関しては,高齢者は若年者よりもポジティブな出来事をより多く想起し,ネガティブな出来事はそれほど想起しないというポジティビティ効果(positivity effect)が報告されている(Kennedy, Mather, & Carstensen, 2004)。さらに,ネガティブな出来事に関しては,高齢者のほうが若年者よりも過去にさかのぼってネガティブな出来事の想起が出来ないことも報告されている。
 このように若年者を統制群とした高齢者の研究は行われているが,しかし,若年者(おもに大学生)を焦点とし,自伝的記憶と感情に関しての検討はあまり行われていない。そこで本研究では,高齢者と同様なポジティビティ効果がみられるかどうかの検討を行うことにした。もし,若年者にもポジティビティ効果があるなら,ネガティブな出来事のほうがポジティブな出来事より少なく想起されるはずである。さらに,想起されたポジティブな出来事とネガティブな出来事のどちらのほうが記憶をさかのぼるのかについても検討も行った。

方法
実験計画 楽しい・悲しい出来事の想起する順序を参加者間要因,楽しい・悲しい出来事を経験した年齢の想起を参加者内要因とする2要因であった。
 実験参加者 大学生125名(年齢の範囲は18—22歳(SD=0.9),男性38名,女性87名)。
 記録用紙 A3の紙を2枚用いた。2枚とも二つ折りにした。1枚目の表紙は,実験タイトル「過去の記憶に関す研究」,「楽しい出来事」を5個想起してもらう旨の教示文,具体的な「楽しい出来事」を記入する5個の記入欄を印刷した。裏面は,表紙の5個の「楽しい出来事」に対応した質問項目であった。5個それぞれの出来事を経験した年齢,および,鮮明度,感情価などの属性4項目を印刷した。2枚目は,「悲しい出来事」であったが,1枚目と同様の質問項目であった。最後に年齢と性別を尋ねた。
 手続き 集団式であった。まず,1枚目の表紙の「楽しい出来事」を想起してもらった(3分間)。続いて,1枚目の裏面を記入してもらった(3分間)。1枚目が終了したら,1枚目と同様の手続きで,2枚目の「悲しい出来事」も行った。なお,「楽しい出来事」と「悲しい出来事」の想起する順序は,参加者間でカウンターバランスした。

結果と考察

1)ポジティビティ効果の結果 ネガティブな出来事のほうがポジティブな出来事より少なく想起されるというポジティビティ効果について結果を整理した。
 楽しい・悲しい出来事を先に想起した群ごとに,楽しい・悲しい出来事のそれぞれの想起頻度の平均を算出し,図1に示した。

図1が示すように,楽しい・悲しい出来事を先に想起した群いずれにおいても,悲しい出来事のほうが楽しい出来事よりも想起頻度が有意に低かった。若年者でも高齢者の先行研究と同様なポジティビティ効果が見出せた。

2)楽しい・悲しい出来事の平均想起年齢の結果 想起された楽しい・悲しい出来事のなかで,最も低い年齢をそれぞれ用いた。
楽しい・悲しい出来事を先に想起した群ごとに,楽しい・悲しい出来事のそれぞれの平均想起年齢を算出し,図2に示した。

 図2が示すように,楽しい・悲しい出来事を先に想起した群いずれにおいても,悲しい出来事のほうが楽しい出来事より年齢が有意に低かった。
 以上,1)の結果から,高齢者と同様なポジティビティ効果が見出せた。さらに,2)の結果から,ネガティブな出来事のほうがポジティブな出来事よりも,記憶に長く貯蔵されている可能性が本研究から新たに見出された。

引用文献
Kennedy, Q., Mather, M., & Carstensen, L. L. (2004). The role of motivation in the age-related positivity effect in autobiographical memory. Psychological Science, 15, 208-214.

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