発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-098

意図記憶に及ぼす選択活動型の効果

[責任発表者] 豊田 弘司:1
1:奈良教育大学

目的 自分で選択した語が,強制的に選択させられた語よりも記憶成績が良いという現象は,自己選択効果(self-choice effect)として知られている。そこでは,参加者は,いずれか1つの単語を選び,その選択語を記銘する。しかし,日常における学習場面においては,憶えようとする情報の保持を促進するために,下線を引いたり,○で囲んだり,余計な情報を消したりする活動を行う。このような活動が,情報の保持に貢献しているか否かは明らかになっていない。
本報では,単語対が提示された場合に,憶えようとする単語(選択語)を囲み,憶えない単語(非選択語)を消す条件(CC),選択語を囲み,非選択語はそのままにする条件(CN),選択語には何もせず,非選択語を消す条件(NC)を設け,選択語の再生率における条件間の有効性を比較する。意図記憶事態であるので,どの条件でも1つの単語(選択語)を記銘すれば良いのであるから,記憶負荷は同じである。しかし,CC条件は,選択語を囲み,非選択語を消すという活動で単語対が対比的になり,他の条件よりも選択規準が明確になる。豊田・小林・平野(2007)は,単語同士の対比が明確である単語対においてのみ自己選択効果が生じることに注目し,選択規準の明確さが選択語の認知構造への統合を促すという統合仮説を提唱した。この仮説によれば,選択規準が明確である場合に自己選択効果が大きいので,CC条件が,他の2条件(CN,NC)よりも再生率が高くなるであろう。この予想を検討するのが本報の目的である。
方 法
 a)実験計画 選択活動型(CC,CN,NC)を参加者内要因とする1要因計画。b)参加者 看護学校の学生30名(男6,女子24)平均年齢19.6歳 c)材料 記銘語は,豊田(2014)と同じく,兵藤ら(2003)から選択された漢字2字熟語(例 幸福,希望)を用い,快語と中立語が対にされた。記銘リストは、左右の位置を統制し,選択活動型(CC,CN,NC)の各条件に10対ずつ(選択語10語,非選択語10語)を割り当てた。リストは,B6班の小冊子にされたが,練習試行のための3ページに続き,本試行のページがあり,その最初と最後のページにバッファー対を1対ずつ含み,選択活動型と単語対をカウンターバランスして,3リスト作成された。d)手続 意図記憶手続きを用いた集団実験。1)練習試行 参加者は,上述の小冊子が配布され,実験者からページに表示されている教示(Fig.1)にしたがうように指示された。1ページ目(CC),2ページ目(CN),3ページ目(NC)を順次行い,練習試行を終えた。2)本試行 小冊子に,挿入ページがあり,その次から本試行に対応するページが続いた。本試行では,各ページの2つの単語のどちらでもいいので,1つの単語を憶えるように教示され,その際,各ページに表示されている教示通りに,○や×を記入するように指示された。参加者は,実験者の合図にしたがって,10秒ごとにページをめくり,選択活動と単語の記銘を行った。3)自由再生テスト 書記再生3分。選択語,非選択語にかかわらず,想いだした語すべてを記入。
結 果
 Table1 選択語の再生率に関する分散分析の結果,選択活動型の主効果(F(2,58)=4.30, p<.05)が有意であり,CC>CN=NCという関係が示された。非選択語の再生率に関する分散分析では,選択活動型の主効果は非有意。
考 察
予想は支持され,CC条件が最も再生率が高かった。豊田ら(2007)による統合仮説によれば,選択語と非選択語をともにマークすることによって,自己選択の規準が明確となり,選択語が認知構造に統合されやすくなったと解釈できる。この解釈の妥当性は検討の余地があるが,選択語を○で囲むという活動と,非選択語を×で消すという活動が加算的効果を持ち,選択語に対する有効な符号化を生み出すことが明らかになったといえる。

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