発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-065

ベクション課題に与えるマインドフルネス瞑想法の影響

[責任発表者] 大塚 聡介:1
[連名発表者] 妹尾 武治#:2, [連名発表者] 小野 史典:3
1:山口リハビリテーション病院, 2:九州大学, 3:山口大学

目 的
視野の広い範囲に一定方向に運動する視覚刺激を呈示すると,自己運動が知覚されることがある(ベクション)。これまでの研究により,ベクションは自己受容感覚の影響を受けることが知られている。例えば,重い鉄の靴を履くことでベクションが抑制される一方,アルコール摂取時にはベクションが促進されることが確かめられている(Seno, Abe, & Kiyokawa, 2013; Seno & Nakamura, 2013)。
本研究では,自己受容感覚を操作する方法として,マインドフルネス瞑想法を用いる。マインドフルネス瞑想法とは,自らの呼吸に意識を集中すること等によって,Kabat-Zinn (1990)の定義する「今ここでの経験に,評価や判断を加えることなく,能動的に注意を向ける」状態を達成するための介入技法である。Naranjo & Schmidt (2012)は,マインドフルネス瞑想法の訓練を行った参加者は,リーチングタスクにおける運動が遅くなると共に,正確さが増すことを明らかにしている。彼らは,マインドフルネス瞑想法が自己受容感覚に影響を与えることで,参加者が自らの身体へのモニタリング能力を向上させたと述べている。
以上のことから,ベクションとマインドフルネス瞑想は自己受容感覚という観点で密接に関係していると考え,本研究ではマインドフルネス瞑想法がベクション課題に与える影響を明らかにするために実験を行った。
方 法
実験参加者 正常な視覚を有する大学生・大学院生20名。参加者は各条件に10名ずつ無作為に割り振られた。
手続き 瞑想条件と統制条件の2条件で実験を行った。瞑想条件ではマインドフルネス瞑想を行った後,ベクション課題を行った。統制条件ではベクション課題のみを行った。
ベクション課題 刺激は上方向もしくは下方向に約17 deg/secの速さで運動するグレーティング刺激とした(空間周波数0.16 cycle/deg)。参加者とスクリーンの距離は約100cmとし,刺激の大きさは77.32° (水平) × 61.92° (垂直)であった。各参加者は上方向と下方向を4試行ずつ計8試行行った。刺激の提示時間は30秒とし,提示順序は参加者ごとに無作為とした。参加者は刺激が動き始めてから自分が動いたと感じられている間,ボタンを押し続けた。また試行の最後に,自己運動がどの程度の強さであったかを,「ベクションを全く感じなかった」から「極めて強いベクションを感じた」までの0〜100の101段階で回答した。
マインドフルネス瞑想法 実験者は,Kabat-Zinn(1990)を参考に数息法を参加者に行った。参加者は,目を閉じて椅子に背もたれにもたれずに座った。初めにお腹に手を置いて呼吸によるお腹の動き等に1分間集中し,その後,自らの呼吸の回数を「吸って吐いて」を1として、1〜10まで数える作業を5分間繰り返した。
結果と考察
Figure 1とFigure 2は,各条件のベクションの強さ(Magnitude)と生起時間(Duration)の平均値を示す。エラーバーは標準誤差を表す。上方向の刺激において,瞑想条件の方が統制条件よりも感じていたベクションの強さが弱く(t(18) = 2.94, p<.01),生起時間も短かった(t(18) = 2.81, p<.05)。また,下方向の刺激において,瞑想条件の方が統制条件よりもベクションの生起時間が短い傾向があった(t(18) = 1.79, p<0.1)。
これらの結果は,マインドフルネス瞑想法がベクションを弱める効果があること,さらにその効果は上方向の刺激において顕著であることを示唆している。Naranjo & Schmidt (2012)によると,マインドフルネス瞑想法は自己受容感覚に対するアクセスを促進するとされている。すなわち本研究では,マインドフルネス瞑想法により,自己受容感覚に対し敏感になったことで,視覚刺激による自己運動が生起しにくくなったと考えられる。
Kabat-Zinn, J. (1990). Full catastrophe living: Using the wisdom of your body and mind to face stress, pain and illness. New York: Delacorte.
Naranjo, J. R., & Schmidt, S. (2012). Is it me or not me? Modulation of perceptual-motor awareness and visuomotor performance by mindfulness meditation. BMC Neuroscience, 13, 88–105.
Seno, T., Abe, K., & Kiyokawa, S. (2013). Wearing heavy iron clogs can inhibit vection. Multisensory Research, 26, 569–580.
Seno, T., & Nakamura, S. (2013) Alcohol consumption enhances vection. Perception, 42(5), 580–582.

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版