発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-062

内受容感覚が心拍・呼吸の変動に及ぼす影響 -心拍に近い速さの刺激を用いた検討-

[責任発表者] 田仲 祐登:1
[連名発表者] 梅田 聡:1, [連名発表者] 寺澤 悠理:1
1:慶應義塾大学

目 的
 自分の心拍や空腹感など,身体の内部の状態を知覚する感覚は内受容感覚と呼ばれ,情動の感じ方や意思決定などに影響を与えることが知られている(寺澤 & 梅田, 2014)。内受容感覚は,その指標としてどれだけ正確に身体の情報を知覚できるかという鋭敏さを個人差の指標として用いてきたほか,個人差ではなく,身体に注意を向けることで,情動的な刺激に対する感じ方がかわるといった研究もある(Pollatos & Wittman, 2014)。
また,心拍に近い速さを持つ聴覚刺激は,心拍そのものを減少させる効果を持つといった研究もある(武中ら, 2005)。
本研究では心拍に近い速さを持つ刺激の提示による自律神経反応の変化に,内受容感覚の鋭敏さ,あるいは身体への注意が及ぼす影響を,心拍および呼吸の測定し検討を行った。

方 法
[参加者] 31名(女性16名)の大学生,大学院生が参加した。
[装置] 本実験では第2誘導による心電図の測定(Biopac, ECG100C)および肺呼吸トランスデューサを用いた呼吸の測定を行った(Biopac, TSD201)。
[手続き] 実験では,心拍検出課題あるいは時間計測課題と,刺激提示課題を交互に行った。心拍検出課題では,実験参加者は一定時間(25秒,35秒,45秒)自分の心拍を数えてもらい,その数を報告してもらった。報告された回数と実測値がどの程度どの程度異なっていたかによって,内受容感覚の正確さを評価した。時間計測課題の場合は心拍数ではなく,何秒経過したかを報告してもらった。刺激提示課題では,被験者は赤いランプ,1000Hzの純音,あるいはその両方が提示された。刺激は参加者の安静時の心拍と同じ間隔で提示され,30秒経ったところでその間隔が30ms長くあるいは短くなった。刺激は合計で2分間提示され,計3回,合計90msの変動が起こった。心拍検出課題あるいは時間計測課題と刺激提示課題1回を1セットとし,6セットずつ行った。30秒の中で時間帯によって異なる要因が関係する可能性を踏まえ刺激提示課題中のR-R間隔の最初15拍と最後15拍,そして呼吸数を解析の対象とした。

結 果
心拍検出課題の成績によって被験者を高群と低群の2群にわけ,内受容感覚の鋭敏さの要因,刺激呈示課題中の注意の方向性の要因(心拍・時間),刺激の速さの要因で分散分析をおこなった。最後15拍の間の心拍のうち,聴覚刺激のみを提示した条件において身体への注意による心拍の差が見られ,R-R間隔は心拍に注意を向けた条件のほうが長くなった(F(1,24)=4.34, p < .05, 図1)。また,呼吸では視覚刺激,聴覚刺激両方を提示した条件において,内受容感覚の鋭敏さと刺激の速さのあいだに交互作用が見られ,心拍検出課題の成績が悪かった群は刺激の速さによる心拍への効果が見られた(F(6,120)=3.48, p < 0.01, 図2)。

考 察
本実験では,身体への注意が心拍の変動量を増やし,内受容感覚の鋭敏さによる違いは心拍ではなく呼吸に見られ,内受容感覚が鋭敏でないほうが呼吸の変動が大きかった。R-R間隔は,身体に注意を向けることによって,生理指標も変化しやすくなるのではないかと考えることができ,それは聴覚刺激によって生じやすいと考えられる。一方,内受容感覚の鋭敏さによる違いは見られなかった。先行研究では内受容感覚の違いによる自律神経反応の違いが出た例は少ないことから,個人差の要因は心拍に影響を与えないと考えることができる。内受容感覚の鋭敏さによる呼吸の変動は,視覚刺激も聴覚刺激も同時に提示された場合にのみ見られたため,刺激による自律神経反応の違いについて今後検討する必要がある。
今回の結果は異なる自律神経反応において,内受容感覚が及ぼす役割について考える必要があるほか,内受容感覚を鋭敏さという指標のみではなく,普段どれだけ身体の感覚に注意を向けているかなど,内受容感覚に対する多角的な視点を持って検証する必要性を示していると考えられる。

引用文献
Pollatos, O., Laubrock, J., & Wittmann, M. (2014). Interoceptive Focus Shapes the Experience of Time. PlOS ONE, e86934.
武中美佳子・岡井沙智子・小原依子・井上健 (2005). 心拍を基準としたテンポのリズム聴取による生理反応に関する研究 臨床教育心理学研究, 31, 43-55.
寺澤悠理・梅田聡 (2014). 内受容感覚と感情をつなぐ心理・神経メカニズム 心理学評論 57(1), 49-66.

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版