発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-056

司法面接と多機関連携の使用に関する専門家の意識

[責任発表者] 仲 真紀子:1
1:北海道大学

目 的
事件や事故に遭遇した子どもから,より正確な情報を,より多く,できるだけ精神的負担をかけないで聴取しようとする面接法を,司法面接(forensic interviews, investigative interviews)という(仲, 2011)。司法面接では,正確な情報をできるだけ多く得るために,導入-自由報告-質問-クロージングという構造のなかで,オープン質問を主体とする面接を行う。また,面接の繰り返しからくる精神的負担を軽減するため,福祉,司法等の専門家が連携し(多職種連携:MDT),最小限の回数で面接を行うことを推奨している。
筆者らは2008年より,福祉,司法の専門家に司法面接の研修を実施しており,受講者数は2000人を超えた。実際,司法面接を使用する児童相談所の数も増加している(山本ほか, 2015等)。しかし,司法面接は,いまだ制度としては確立しておらず,多職種連携の実施例も限られている。
本調査は,プロジェクトの一環として,司法面接の使用や司法面接・多職種連携を阻む要因につき,専門家の意識を調べるために行われた。具体的には,筆者らが提供している研修の後,研修の効果,技能の習得度,司法面接の今後の使用,司法面接・多職種連携の実施を阻む要因等についての評定,記述を求めた。虐待相談件数の上昇にも見られるように,被害児童への配慮は年々高まっている。時期の効果も見るために,前期,後記に分けて調査を実施した。
方 法
第1期(2013年3月〜6月)に調査1を,半年後の第2期(2013年12月〜2014年3月)に調査2を実施した。
参加者:調査1には98人(心理司29人,福祉司35人,司法関係者23人,その他11人),調査2には110人(心理司39人,福祉司33人,司法関係者38人)の専門家が回答した。
手続き:調査1では2日間,調査2では1−2日間の研修の最後に,調査を実施した。参加者は承諾書に署名の上回答した。
調査項目:(1)研修の効果,(2)司法面接の技能,(3)今後の使用に関する3点について,4件法で回答を求めた。
・今回の研修は:とても役立った,かなり役立った,ある程度は役立った,役に立たなかった
・司法面接を行う技能は:よく習得できた,かなり習得できた,ある程度は習得できた,習得できなかった
・今後,司法面接を:とても使ってみたい,かなり使ってみたい,ある程度は使ってみたい,使いたくない
さらに,司法面接の(4)利点,(5)難点,(6)司法面接を阻む理由,(7)多職種連携を阻む理由を自由記述で求めた。複数回答可とした(紙幅のため,以下では(4)(5)を割愛する)。
結 果 と 考 察
研修・技能・今後:(1)-(3)の結果を表1に示す。調査1,2とも,研修は「とても役立った」としながらも,技能については「ある程度は習得できた」への回答が多く,「今後の使用」については,「とても」「かなり」「ある程度」に回答が分散した。調査1,2につきカイ自乗検定を行ったが,ばらつきに差はなかった。
回答を1−4点と得点化し,相関を調べたところ,調査1では「今後の使用」と「研修」「技能」との間に正の相関が見られた(r = 0.38,r = 0.31 いずれもp < .01)。調査2でも「今後の使用」は「研修」「技能」と正の相関があり(r = 0.24,r = 0.36 いずれもp < .01),「研修」と「技能」の間にも相関があった(r = 0.19,p < .05)。なお,調査2では性差(女性の方が研修の評価が高い),専門間の差(司法,心理で「今後の使用」の得点が高い)が見られた。
司法面接・多職種連携を阻む要因:(6)(7)の結果を表2に示す。自由記述された要因をボトムアップに分類したところ,調査1,2とも,「司法面接を阻む要因」としては制度(法,組織体制,多職種連携システム),技能(技能,理解不足),当事者要因(話さないかもしれない,録画を嫌がるかもしれない),実務要因(時間的制約や設備)等の反応が見られた。
「多職種連携を阻む要因」としては,調査1,2とも,制度(法,組織体制,多職種連携システム等),技能(技能,理解不足),相違(目標,方法,考え方,立場の相違),実務的な問題(現実的に困難)等が示された。
調査1,2の各反応の構成はほぼ同様であったが,調査2では,阻む要因は「ない」とする反応も1割程度見られた。
技能の向上,当事者への対応,相互理解の促進といった心理的要因への支援を行うとともに,科学的証拠にもとづく制度の改善への働きかけが重要である。
引用文献
仲真紀子 (2011). 法と倫理の心理学.培風館.
山本恒雄ほか (2015). 厚労科研報告書, 13-32.

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