発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-054

虚偽検出検査に関する基礎的研究—眼球運動測定におよぼす刺激呈示時間の影響(2)—

[責任発表者] 小野 洋平:1
[連名発表者] 石岡 綾香:1, [連名発表者] 軽部 幸浩:1, [連名発表者] 谷口 泰富:1
1:駒澤大学

目 的
既に,虚偽検出検査における眼球運動指標の有効性について報告してきたが,今後の課題としては,他の自律神経系指標との同時測定のみならず,刺激の呈示時間や呈示方法(一覧呈示・単独呈示)が検査結果に及ぼす影響を検討することなどが挙げられる。前報(小野他,2013)では,呈示時間を従来の8秒から5秒に短縮した結果,検出率が低下することを報告した。そこで本研究では,刺激呈示時間を20秒に延長し,刺激呈示時間が検査結果に及ぼす影響を検討した。
方 法
実験参加者 23名(男3名,女20名)
実験器材 竹井機器工業製TalkEye2カバー型トラッキング検出器(T.K.K.2940g)および制御プログラム(ver.1.1.8)
実験刺激 裁決刺激:ペン,非裁決刺激:タバコ,爪切り,スプーン,MD
手続き 模擬窃盗課題では5つの品物のうち,1つを隠匿させた。その際,いずれの実験参加者も裁決刺激がペンとなるよう模擬窃盗の手続きを操作した。また,検出回避の動機づけを高めるため,虚偽検出検査で隠匿物を実験者が特定できなかった場合,検出回避成功の報酬として500円を進呈することを教示した。
虚偽検出検査では,ブランク刺激呈示ののち刺激画像(縦7.6°×横5.9°)を4枚1組で40インチ液晶ディスプレイに呈示した。小野他(2013)の刺激呈示時間は5秒であったが,本研究では20秒とした。4枚の刺激画像は,ディスプレイの中心から半径17度の円内に収まるようにあらかじめ指定した左上,右上,左下,右下の4位置にランダムに配置した。実験参加者には,画面に刺激が呈示されている間に,隠匿物の表示の有無にかかわらず, “あなたの持っている品物があるか”の質問に対してすべて“いいえ”で返答させた。その際の眼球運動をサンプリング周波数60 Hz,分解能0.1°で測定し,各画像への停留回数と総停留時間を分析した。本研究では,呈示される刺激に裁決刺激が含まれる試行(裁決試行)を8試行,非裁決刺激のみ呈示される試行(非裁決試行)を8試行,計16試行実施した。検査終了後,隠匿物が何であったかを実験参加者に告げ,実験を終了した。
結果の処理 本研究では,各刺激画像が呈示されている領域内に視線が166 ms以上とどまっている場合を1回の停留と定義した。そこから,1試行で生起した刺激への停留を加算し,これを停留回数とした。同様に,1試行で生起した各刺激への停留持続時間の総和を総停留時間と定義し,裁決刺激と非裁決刺激に対する停留回数と総停留時間を分析した。
結 果
 図1は裁決試行における裁決刺激と非裁決刺激に対する停留回数を5秒おきに4ブロックに分けて示したものである。2要因分散分析の結果,刺激の種類の主効果が有意であり,裁決刺激への停留回数は非裁決刺激よりも少なくなっていた(p <.01)。一方,ブロックの主効果および交互作用は有意ではなかった(n.s.)。

図2は,裁決試行における裁決刺激と非裁決刺激に対する総停留時間を5秒おきに4ブロックに分けて示したものである。2要因分散分析の結果,刺激の種類の主効果が有意であり,裁決刺激への総停留時間は非裁決刺激よりも短くなっていた(p <.01)。また,ブロックの主効果も有意であり,ブロック2およびブロック3に比べブロック1の総停留時間は短くなっていた(p <.01)。一方,交互作用は有意ではなかった(n.s.)。

 反応傾向に関しては,裁決刺激への平均停留回数が非裁決刺激より少なくなっていた者は23名中21名,裁決刺激への平均総停留時間が非裁決刺激よりも短くなっていた者は23名中22名であり,いずれも期待値より多くなっていた。
考 察
本研究では,刺激呈示時間が虚偽検出検査における眼球運動に及ぼす影響を検討した。その結果,刺激を20秒呈示した場合においても裁決刺激と非裁決刺激との反応差異は明確であった。一方,総停留時間に関しては,ブロック1の総停留時間が他のブロックに比べて有意に短くなっていた。この結果に関しては,追試を行い再現性が認められた場合には,その生起機序を再度吟味する必要があると思われる。
また,被検査者の反応傾向から得られた検出率は90%を超えており,従来の検出指標との同時測定における刺激呈示時間の問題を考慮しても眼球運動指標の有効性が指摘できる。

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