発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-052

悪夢の苦痛度に関連する精神症状の検討

[責任発表者] 岡田 斉:1
[連名発表者] 松田 英子:2
1:文教大学, 2:東洋大学

目  的
悪夢の苦痛度を測定する質問紙であるNDQ (Belicki, 1992) と精神症状との関連について検討したMartinez, et al. (2005) はうつおよび不安と悪夢の苦痛度との関連を、Böckermann, et al. (2014) はうつおよび悪夢の頻度と悪夢の苦痛度との間に関連性を見出している。これらの知見はLevin & Nielsen (2007) が指摘する不安障害のカテゴリーと悪夢の苦痛度との関連性を間接的に示すものと考えられる。さらに彼らは、不安障害のみならず、悪夢は統合失調傾向や空想傾向、イメージの鮮明性などの知覚・認知的側面の異常を伴う障害とも関連することを示唆しているが、これらの側面に関してはNDQとの関連性は明らかにされていない。そこで、本研究では悪夢の苦痛度および下位因子とうつ傾向の追試に加え、新たに統合失調症スペクトラム、空想傾向、イメージの鮮明性、離人感の関連性について大学生を対象に調査を行い検討したので報告する。
方  法
調査時期と調査対象者:2013年9月から2014年7月に実施した。対象者は関東圏の2つの私立大学の大学生479人(男性68人、女性411人)。年齢は18から34歳、平均19.4歳(SD 1.15歳)。このうち女子大学生221人については岡田・松田(2014)で報告された対象者に含まれている。質問項目によって若干の欠測値があるため、分析によって対象者の人数に若干の変動があり、分析ごとにそれを明記した。
質問紙
悪夢の苦痛度:Belicki (1992) の作成した13項目からなる Nightmare Distress Questionnaire (NDQ)を作者の許諾を得たうえで翻訳したNDQ-J (岡田・松田,2014)。うつ:SDS日本語版20項目。統合失調型パーソナリティ:坂東、毛利、下山、高祖、丹野(2003)が翻訳したSPQ 74項目のうち短縮版にあたるSPQ-B 22項目(Rain & Benishay, 1995) 。空想傾性:Creative Experience Questionnaire日本語版(CEQ-J)(岡田・松岡・轟,2004)25項目。視覚イメージの鮮明性:VVIQ (Marks, 1973) 16項目。この尺度については1大学でしか実施していないためサンプル数が少ない。離人感:田辺(2004)が翻訳した日本語版ケンブリッジ離人尺度(CDS)29項目のうち頻度に関する5段階評定部分を使用した。
質問紙への協力依頼と教示は共通教育の心理学の講義の時間中に実施し、無記名での回答を求め、自発的に協力提出された用紙を回収した。質問紙は一つの授業で1種類のみ実施したため6週間に渡って実施した。
結果と考察
 NDQ-Jの合計得点、3つの下位尺度得点と各心理尺度との相関を表に示す。NDQ-Jの合計得点は、統合失調症スペクトラム、離人感、空想傾向、うつ傾向と有意な相関を示している。うつ傾向に関してはスペイン語版 (Martinez, et al., 2005)、ドイツ語版 (Böckermann, et al., 2014) ではいずれも0.3以上の相関係数を得ているが今回のデータでは有意ではあるもののそれらよりは低い値にとどまっている。SDSとNDQ-Jの実施間隔は1ヶ月であったことが影響した可能性も考えられる。
これらの結果は、Levin & Nielsen (2007) が統合失調症スペクトラム障害において頻回な悪夢が伴うと指摘していること、頻回悪夢のある人では解離の指標および空想傾向が高くなることを示唆している点を支持するものと思われる。さらに、これらはいずれも悪夢の頻度との関連性を示す結果であり、今回の結果はこの関連性を苦痛度においても裏付けるものと思われる。
 NDQ-Jの3下位因子と各尺度との関連性を見ると統合失調スペクトラム、空想傾向、離人の3つに関しては下位因子別の相関係数には目立った差異はない。しかし、うつ傾向は悪夢への対処因子、VVIQは悪夢の苦痛の下位因子とのみ、低いながらも有意な相関を示している。うつ傾向と悪夢への対処因子の関連性に関しては、悪夢に限らない一般的な精神的苦痛に対する反応性が関わっている可能性がある。一方で視覚的イメージの鮮明性は、悪夢のイメージそのものの鮮明性が高い可能性を示唆する。悪夢の苦痛因子に関しては、イメージの質とイメージに対する反応性の2つの側面から検討することが必要であろう。

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