発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-044

大学生の認知する養育態度と自己愛・過剰適応との関連

[責任発表者] 小橋 亮介:1
[連名発表者] 津川 律子:2
1:名古屋大学, 2:日本大学

目 的

 近年,自己愛の肥大化が指摘されており(小此木,1992),自分の自己愛を守るために社会からひきこもるような現象が増えている(中村,2004)。一方で過剰適応は,内的な欲求を無理に抑圧してでも,外的な期待や要求に応える努力を行うこととされ,ストレス反応を高めることが示されている(石津・安保,2008)。このような自己愛や過剰適応に養育態度が影響を与えることはすでに研究がなされている。しかし,自己愛と養育態度の関連に関する研究結果は一致しておらず,近年注目されている過敏型の自己愛と養育態度との関連についての研究は少ない。また,過剰適応と養育態度については母親の養育態度との関連を研究したものが多く,父親の養育態度との関連を研究したものはみられない。以上のことから本研究では,養護因子と過保護因子の2次元の組み合わせによる4つの分類をもつParental bounding instrument(PBI)の日本語版(小川,1991)を使用し,見解が一致していない誇大型の自己愛と養育態度の関連に加えて,過敏型の自己愛と養育態度の関連の検討をする。さらに,過剰適応と父親の養育態度との関連を検討するため,養育態度を父親・母親別にして過剰適応との関連を検討する。

方 法

 調査対象 日本大学大学生288名に質問紙調査を行った。そのうち、無効回答や欠損回答を除き父親・母親のいる大学生251名(男性135名,女性116名)を分析の対象とした。

 調査項目 1:評価過敏性-誇大性自己愛尺度 中山・中谷(2006)による自己愛尺度。評価過敏性自己愛8項目,誇大性自己愛10項目からなり、5件法で回答を求めた。

 2:青年期前期用過剰適応尺度 石津(2006)の尺度。過剰適応の外的側面である他者配慮8項目,期待に沿う努力7項目,人から良く思われたい欲求5項目と、内的側面である自己抑制7項目,自己不全間6項目の全33項目から構成されており、5件法で回答を求めた。

 3:Parental bounding instrument(PBI)の日本語版 Parkerら(1979)によって開発されたものを小川(1991)が日本語版にしたもの。養護因子12項目,過保護因子13項目からなり4件法で回答を求めた。

 手続 平成26年6月下旬から7月上旬に、大学の講義時間内に3つの尺度および諸注意などを明記したフェイスシートを閉じた冊子を配布し、記入を求めた。

結 果

 青年期前期用過剰適応尺度に対し,最尤法・Promax回転の因子分析を行った結果,10項目を除外した23項目から原尺度と同様の「自己抑制」,「人から良く思われたい欲求」,「自己不全感」,「期待に沿う努力」,「他者配慮」の5因子を抽出した。また,性差の検討をしたところ,誇大性の自己愛得点で男性の方が有意に得点が高く,評価過敏性と自己抑制を除く過剰適応の下位因子で女性の方が有意に得点が高かった。そのため,以降の統計処理は男女別の検討も加えることとした。

 次に各変数について相関分析を行った。誇大性の自己愛と養育態度にはほとんど相関が無かった。評価過敏性の自己愛は過保護因子と正の相関がみられ(r=.21 〜.26),女性のみで父親の養護因子と負の相関がみられた(r=-.27)が,いずれも弱い相関であった。

 続いて鈴木ら(2002)に従い中央値をカットオフにして,養育態度を4つの類型に分類し分散分析・多重比較を行った。父親の養育態度の自己抑制(F(3,247)=3.56,p<.05)と自己不全感(F(3,247)=5.06,p<.01),母親の養育態度の自己不全感(F(3,247)=3.27,p<.05)において情愛と自律承認群が低い得点となった。さらに,本研究ではPBI得点の分布が正規分布に近かったため,平均値をカットオフにした分類でも同様の分析を行った。父親の養育態度の自己不全感(F(3,247)=4.57,p<.01)と母親の養育態度の自己不全感(F(3,247)=3.13,p<.05)で情愛と自律承認群が低い得点となった。また,過剰適応の外的側面である人から良く思われたい欲求や他者配慮にも有意差が見られた。

考 察

 本研究では,養育態度と自己愛・過剰適応との関連に着目して検討を行った。その結果,誇大性の自己愛と養育態度間では関連はみられなかったが,評価過敏性の自己愛・過剰適応と父親・母親それぞれの養育態度との関連が示唆された。また,本研究の目的には無かったが,相関分析から自己愛と過剰適応の関連も示唆された。

 従来、自己愛傾向は親の養育態度との関連が強いとされてきたが、本研究のように誇大性の自己愛に養育態度が関連していない研究結果が示されており、友人関係のような養育態度以外の要因との関連を検討する必要がある。

引用文献

小此木啓吾(1992).自己愛人間 ちくま学芸文庫 pp.14-15.

中村晃(2004).健全な自己愛と不健全な自己愛 千葉商大紀要,42,1-20.

石津憲一郎・安保英勇(2008).中学生の過剰適応傾向が学校適応感とストレス反応に与える影響 教育心理学研究,56,23-31.

小川雅美(1991).PBI(Parental Bonding Instrument)日本語版の信頼性,妥当性に関する研究 精神科治療,6,1193-1201.

中山留美子・中谷素之(2006).青年期における自己愛の構造と発達的変化の検討 教育心理学研究,54,188-198.

石津憲一郎(2006).過剰適応尺度作成の試み 日本カウンセリング学会第39回大会発表論文集,137.

Parker,G.,Tupling,H.,&Brown,L.B.(1979).A parental bounding instrument.British Journal of Medical Psychology,52,1-10.

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