発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-041

母親を対象としたマインドフル・ヨーガの効果:KJ法に基づく質的データの検討

[責任発表者] 相馬 花恵:1
[連名発表者] 越川 房子:1
1:早稲田大学文学学術院

目 的
 今日,育児に際して不適応感を抱く母親が増大し,問題視されている。こうしたことを背景に,母親自らが心的適応を維持・促進する力を育成する介入が求められている。そうした介入として,マインドフルネス・トレーニングがある。本技法は,生じてくる内的・外的な刺激の流れを判断せずに観察する態度(Bear, 2003)を涵養することを目的としている。マインドフルネス・トレーニングにより,たとえ不快な思考や感情が生じても,それに目を向け,受け入れることが可能になる。それにより,不快な思考や感情を繰り返し考えたり,無理やり変えようと反応することがなくなり,その結果,不適応に陥ることが抑止されるのである。
相馬・越川(2013)は,マインドフルネス・トレーニングの一つであるマインドフル・ヨーガを,育児期の母親を対象に2週間実施した。そして,その効果を量的データから検討した。その結果,介入期間の前後で,不安の減少や本来感の増大といった心的適応が改善する等の効果が示された。
 本発表では,母親を対象としたマインドフル・ヨーガの効果を,質的データに注目して検討する。具体的には,質的データとして技法実施時に記入を求めた練習記録を取り上げ,その内容をKJ法に基づくカテゴリー化により分析する。なお,今回は練習時期による記録内容の変化を明らかにするため,2週間の介入中にみられた記録を,前期1週間と後期1週間の二つに分け,分析を行う。
方 法
分析対象:育児期の母親21名(平均年齢36.0±4.68歳)を対象に実施したマインドフル・ヨーガの練習記録用紙内容(合計189件;前期1週間110件,後期1週間79件)を分析対象とした。なお,上記の練習記録用紙には,「技法実施日時」および「練習中または日常生活の中での心や体の変化」を記入する欄が設けられていた。
手続き:分析は,KJ法(川喜田,1970;川喜田,1987)を参考に,下記のとおり実施した。(1)前期・後期の時期ごとに練習記録用紙の内容を抽出し,内容が似ていると考えられたもの同士をまとめ,カテゴリー化を行った。(2)時期ごとに,カテゴリー間で関連があると考えられるものはカテゴリー化を繰り返した。(3)前期・後期の各記録にみられる共通カテゴリーと相違カテゴリーをまとめた。なお,分析結果には,分析実施者(第一発表者)の過去の経験やマインドフル・ヨーガに対する捉え方等が反映される可能性がある。そのバイアスを補うため,上記の分析は,第三者(心理学を専門とする大学講師3名および大学院生3名)に協力を求め,実施した。
結果と考察
 前期1週間および後期1週間の記録内容を分類した結果,両時期とも,技法実施に関するカテゴリー,日常生活に関するカテゴリー,その他,の三つから成っていた。今回は,主要な要素となっている技法実施に関するカテゴリーと日常生活に関するカテゴリーに焦点を当て,分析結果を述べる。
1.前期1週間および後期1週間の記録
 前期・後期の各記録を分類した結果,いずれも同様のカテゴリーが生成された。まず,「技法実施に関する報告」からは,【技法の実施】,【技法実施の感想(技法への慣れ,意欲など)】,【技法前後で見られた心身の変化】,【技法中の精神活動(体験への気づきなど)】の4つのカテゴリーが生成された。
 また,「日常生活に関する報告」からは,【日常における技法実施への感想】,【日常における心身の変化】,【日常における精神活動】,【日常での育児における変化】の4つのカテゴリーが生成された。
2.各時期の記録における共通カテゴリーと相違カテゴリー
 上述したとおり,前期および後期の記録から生成されたカテゴリーは,いずれも共通したものであった。そこで,各時期に見られるカテゴリーをより詳細に検討するため,下位カテゴリーに焦点をあて,共通点・相違点を検討した。
 まず,時期に共通してみられる下位カテゴリーのうち,「技法実施に関する報告」では,安静感やすっきり感といった内的感覚の実感をはじめ,マインドフル・ヨーガによる心身の変化を報告する記録が見られた。また,自身の思考や感情を含む,今ここにおける経験を観察する態度を報告している記録も見られた。そして,「日常生活に関する報告」でも,心身の変化に関する報告や,経験を観察する態度の報告が見られた。それに加えて,母親が子どもを叱らなくなったことを報告する記録も見られた。
 一方,前期あるいは後期のいずれかのみに見られた記録も得られた。前期のみに見られた記録としては,技法実施への意欲など,マインドフル・ヨーガに対する感想を報告する記録が見られた。またその一方で,覚醒水準の低下や痛み,緊張などを報告する記録も見られた。さらに,日常において気分が改善されていないことを報告する記録も見られた。
続いて,後期のみに見られた記録としては,技法の習得や,効果を実感したことを報告する記録が見られた。また,技法実施中だけでなく,日常生活の中でも身体や内的状態へ気づきを向けていることを示す記録が見られた。さらに,子どもの言動が変化したことを示す記録も見られた。
上記の通り,前期1週間の記録には,痛みといった不快な感覚に関する報告が見られたが,後期では,そうした報告は見られなかった。代わりに,後期では,技法の効果や子どもの言動の変化といった報告が見られた。ここから,育児期の母親が,マインドフル・ヨーガを習得しその効果を実感するには,少なくとも2週間の継続練習が必要であることが示唆された。さらに,この2週間の継続練習により,母親だけでなく子どもの言動にも変化が生じる可能性が示された。
引用文献
相馬花恵・越川房子(2013).母親に対するマインドフル・ヨーガの効果検討 子育て研究,3,8-17.

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