発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-039

主役へのウォーミングアップ尺度の開発(5)−パス解析を用いての検討ー

[責任発表者] 谷井 淳一:1
1:ルーテル学院大学

問題と目的
古典的サイコドラマは,通常,ウォーミングアップ,アクション(ドラマ化),シェアリングの3段階をへて展開される。このうち,ウォーミングアップの段階は,グループにとってはグループ内にある緊張緩和をするための準備運動,メンバーにとっては,日常の空間とドラマという特殊空間の世界との橋渡し,監督にとってはそのグループの今の状態や誰が主役として適切かを診断するという意味がある(高良,1986)。ウォーミングアップの最終段階では,参加者がこの場で自分の課題を特定し,主役になろうという気持ちを高めるよう導くことが大切である。参加者がどのようなプロセスを経て,主役への準備性や主役への自発性を獲得していくかを明らかにすることは極めて重要である。そこで本研究では,参加者が古典的サイコドラマの場で自分の話題を提供し,主役を演じ何かをこの場で得ようとする意欲やその準備性のことを「主役準備性」と呼ぶことにする。このような主役準備性に関する知見を得るために,谷井(2013)は,グループ信頼感,主役準備性,ドラマ信頼感,開示不安の4因子からなる主役へのウォーミングアップ尺度(WSP)を開発した。本研究では,この4つの変数間の関係の変化のプロセスを検討する。
方法
1.調査対象
 2011年前期および2012年前期にサイコドラマの授業(8回のセッション)を履修した合計62人に調査を実施した。欠席を2回以上した受講者を除いた有効回答者数は55人であった。各年度ともに2グループで実施したが,男女別の内訳は,男性22人(19-32歳,M=21.2,SD=2.98),女性33人(19-58歳,M=24.3,SD=10.05)であった。グループごとにそのセッションの中で7人が主役経験をした。その結果,全体で28人(有効回答27人)が主役経験をしたことになり,それらの者を主役あり群として分析を行った。
2.調査内容
 谷井(2013)が改訂したWSP27項目を用いた。全部で8回の2週間ごとの授業のうち,調査は1回目・2回目・4回目・6回目・8回目の授業でWSPを繰り返し記名式で実施した。
結果
 相関分析で考察した因果関係の方向をもとに検討した結果,3つの説明変数のうちグループ信頼感が先行変数として,ドラマ信頼感と開示不安に影響を与え,最終的に3変数がすべて主役準備性に影響を与えるというモデルを考えた。 
 4回目の授業でのパス図(図1)では,グループ信頼感は,主役準備性に対する直接効果(-.14),ドラマ信頼感を経由した間接効果(.86×.35=.301),開示不安を経由した間接効果(-.46×-.40=.184)で,3つの効果の合計が.345となり,主役準備性とグループ信頼感の単純相関(r=.35)をうまく説明できた。
 6回目(図2)では,グループ信頼感は,主役準備性に対する直接効果(.45),ドラマ信頼感を経由した間接効果(.90×.11=.099),開示不安を経由した間接効果(-37×-.00=.00)で,3つの効果の合計が.549となり,主役準備性とグループ信頼感の単純相関がr=.55ということをうまく説明できた。つまり,6回目では,グループ信頼感の主役準備性に対する直接効果が大きくなり,間接効果は小さいものの正の値を示し,その合計として,グループ信頼感が大きく主役準備性を規定するようになったといえる。図1図2の比較により,回を重ねることによりグループ信頼感の影響が増加するメカニズムが明らかになった。

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