発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-036

対人援助職における行動分析的知識の検討2 保育士・幼稚園教諭を対象とした調査における市町村差の検討

[責任発表者] 宮 裕昭:1
[連名発表者] 平田 真知佳:1
1:市立福知山市民病院

目 的 
発達障害児の療育を含む育児方法として,応用行動分析(Applied Behavior Analysis:ABA)の有効性が多くの実践や研究から示されている。昨年,筆者らはある市町村(A市町村)の保育士・幼稚園教諭におけるABA知識の実態を報告した(宮・平田,2014)が,かなりのABA知識の獲得が求められ,しかも自発的行動は随伴性操作によって変容するものであることから学ぶ必要性があることなどが示された。
 彼らは市町村の職員として雇用されており,研修の機会もその地域の保育・教育方針を反映したものになりやすい。そこで本研究では,近隣ではあるが異なる市町村(B市町村)の公的保育士・幼稚園教諭に対して同様の調査を行い,ABA知識における市町村差の検討を行うことを目的とする。

方 法
調査対象者 B市町村の全保育園・幼稚園に勤務する保育士と幼稚園教諭150名。(職務歴は1年未満−39年(平均15.6年)であった。なお,昨年調査したA市町村と比較しても大差はなかった。
調査方法 行政の保育園担当部署および教育委員会を通じて各施設に調査依頼を行い,調査協力が得られた者のみ個別に匿名で業務時間外に回答してもらった。KBPAC配布から約1ヶ月後に回収した。なお,調査回収率は91%だった。
調査内容 「子供に応用する行動原理の知識」を測定するKBPACの邦訳短縮版(志賀,1983)を用いた。原版は50設問から成るが,短縮版は25設問となっている。各設問には1つの正答を含む4つの選択肢があり,自分自身の考えにより近いものを1つ選ぶよう教示されている。

結 果
 Figure1に設問ごとの正答率を示した。
平均正答数は25問中,8.5個(平均正答率:34.0%,SD:2.79)。全3750回答(25設問×150名)中,無回答が136個,複数回答が60個あったが,それらは誤答とみなした。なお,A市町村の平均正答数は9.1個(平均36.5%,SD:2.96)。
 正答率が70%以上だった設問は番号5,10,12,17であり,80%以上だったのは番号10と12だったが,これはA市町村も同様だった。
次に,正答率が30%以下だった設問は番号2,3,4,6,7,11,14,16,19,23,25であり,A市町村も同様だった。さらに、その中で10%以下だったのは番号2,3,4,6,7,14,23,25だったが、A市町村は14,23は10%以上だった。
 A市町村とB市町村の結果を質問項目別に統計を行ったところ,設問1と2において正答率に有意差が認められた(設問1:χ2=8.75 p<.05, 設問2:χ2=12.73, p<.05)。設問1においてはB市町村の正答率が有意に高く,設問2においてはA市町村の正答率が有意に高かった。

考 察
両市町村ともに設問全般の平均正答率が4割にも満たず,今後,かなりの行動分析的知識を獲得することが求められる。
 知識内容における両市町村の共通点としては,罰は危険な行動を減少する場合にこそ使用すべきであることや,目標行動への漸次接近の必要性については多くの者が理解していた。しかし,不適切な行動や乏しい適応行動に対しては,随伴性よりも子供の知識や意図,欲求,認知を含む背景因に介入することで行動変容を試みようとする者が多く,習慣化途上にある行動に対しては,強化を中断し,感情に訴えることで当該行動の維持を試みようとする者が多いようであった。よって,両市町村ともに,今後,自発行動は随伴性操作によって変容するものであることから学ぶ必要があるだろう。
両市町村の差異としては,B市町村では確立操作の必要性については比較的多くの者が理解していたものの,特に他害に関する不適切な行動の改善については,子供の知識に介入することで改善を試みることをよしとする者が多かった。
両市町村は地理的には近隣関係にあるが,交流の機会は皆無に等しい。それぞれの地域における保育・教育方針を反映した研修機会や内容が上記ABA知識の差に反映されている可能性が考えられることから,今後,両市町村の研修機会や内容を精査し,それぞれのABA知識の向上に活用することが求められる。

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版