発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-029

福島第一原発事故被災者の決定支援に向けた選好解析

[責任発表者] 玉利 祐樹:1
[連名発表者] 宮川 隆#:1, [連名発表者] 山花 令子#:2, [連名発表者] 作美 明#:3, [連名発表者] 岩満 優美:4, [連名発表者] 竹村 和久:5, [連名発表者] 中川 恵一#:1
1:東京大学医学部附属病院, 2:東京大学, 3:がん研究会有明病院, 4:北里大学, 5:早稲田大学

目 的
福島第一原発事故から4年が経過し、これまでに一部の自治体では避難指示区域の指定が解除されている(原子力災害対策本部,2014)。帰還に関し、個々の住民が置かれる状況と、各人が望む生活を把握した上で決定、あるいは決定支援を行う必要がある。本研究では、仮想的な生活状況に対する選好から、重視する属性の検討を行った。

方 法
福島県住民57名(女性29名、平均年齢41.16±18.63歳)を対象に、仮想的な生活状況に対する選好を、完全順位法で回答を求めた。仮想生活状況は、年間被ばく線量(5mSv以上、未満)、通勤・通学にかかる時間(10分、1時間)、年収(420万円、380万円)、住居近隣における病院の有無の4属性とした。直交計画を用いて、8選択肢を作成した。なお,本研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を得ている。

結 果
順位を従属変数として、コンジョイント分析を行い、各属性の部分効用と、重要度を推定した。なお、回答に不備のなかった44名を分析対象とした。部分効用と重要度の平均値、SD、中央値を表1に示した。病院の有無の部分効用と重要度が最も高く、次いで年間被ばく線量と、通勤時間が高かった。

各属性への重要度に関し、回答者間の距離行列に非計量多次元尺度法を行った。距離は、ユークリッド距離を仮定した。ストレス値は0.14であった。図1に2次元目までの座標値による配置図を示した。図1より、第1・4象限には、病院の有無を最重視する回答者が配置された。第2象限には、通勤時間を最重視する回答者と、年収を最重視する回答者が配置された。第3象限には、年間被ばく線量を最も重視する回答者が配置された。また、第4象限に配置されていた回答者は、被ばく線量と病院の有無を共に重視する傾向が見られた。

考 察
コンジョイント分析から、病院の有無が最も重視される傾向が示され、放射線に対する懸念が解消されてきている可能性が示唆された。一方で、非計量多次元尺度法から、被ばく線量と、病院の有無を共に重視する回答者が示され、現在も放射線による健康影響の懸念が根強い可能性が示唆された。選好と実際の状況や行動が乖離する場合、特に支援が必要であると考えられるため、今後は、実際の生活様式や、個人線量計の測定値も加味し、選好を検討する必要がある。

引用文献
原子力災害対策本部(2014).避難指示区域の解除等(川内村)について 首相官邸 <http://www.kantei.go.jp/saigai/anzen.html> (2015年4月29日)

※本研究は、環境省原子力災害影響調査等事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)により実施された「リスクの多元性を考慮したリスクコミュニケーションの実施とそのあり方に関する研究」の成果である。

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