発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-025

インターネット上での他者情報公開の特徴

[責任発表者] 太幡 直也:1
[連名発表者] 佐藤 広英:2
1:愛知学院大学, 2:信州大学

 インターネット(以下、ネット)利用者は、ネット上での他者情報の扱い方に留意する必要がある。しかし、近年、ネット上での他者情報公開に関して、他者のプライバシー侵害に当たると考えられる社会的問題が話題となることも多い。例えば、ネット上に別れた相手の画像や動画を了解なく公開する“リベンジポルノ”と呼ばれる現象が話題を集めている。
 他者情報のプライバシーに関しては、他者情報のプライバシーへの意識に関する個人差に着目した研究が行われている(Baruh & Cemalclar, 2014; 太幡・佐藤, 2014)。しかし、ネット上の他者情報公開の実態について詳細に検討した研究はほとんどみられない。昨今の状況に鑑みると、他者のプライバシーを侵害することを抑止する方策を得るため、ネット上の他者情報公開に着目した研究が必要になると考えられる。
 以上のことから、本研究では、ネガティブな感情を喚起する他者情報公開に着目し、ネット上での他者情報公開の特徴について明らかにすることを目的とする。具体的には、ネット上で他人の情報を公開し、その人を嫌な気持ちにさせてしまった経験(以下、公開した経験)、ネット上で他人に自分の情報を公開され、嫌な気持ちになった経験(以下、公開された経験)の二側面から経験を抽出する。

方法
 対象者 大学生20名(男性10名、女性10名、平均年齢20.35±0.75歳)に個別に半構造化面接を実施した。
 質問内容 公開した経験、公開された経験について回答するように求めた。どちらの経験も、“公開した(された)内容(以下、内容)”、“相手との関係(以下、関係)”、“公開した(された)手段(以下、手段)”、“公開した(された)後の相手との関係の変化(以下、変化)”に回答するように求めた。加えて、公開した経験は、“公開した理由”、“相手の気持ちを知った経緯” にも回答するように求めた。一方、公開された経験は、“嫌な気持ちになった理由”、“嫌な気持ちになったことを相手に伝えたか”にも回答するように求めた。公開した経験、公開された経験のそれぞれに複数の経験がある場合には、それぞれの経験について想起を求め、質問を繰り返した。なお、公開した経験、公開された経験に回答を求める順序は、カウンターバランスをとった。
 データの分類 それぞれの項目について、回答の結果得られた事柄に基づき、大学生2名(ともに女性)がKJ法(川喜田, 1967)によりカテゴリーを作成した。

結果と考察
 調査対象者から得られたのは、公開した経験29場面、公開された経験33場面であった。公開した経験、公開された経験とも、全員から経験が抽出された。一人あたりの経験の言及数について、公開した経験(M=1.45, SD=0.60)と公開された経験(M=1.65, SD=0.59)に有意差はみられなかった(t(19)=1.16, ns)。以下、質問項目ごとに、公開した経験、公開された経験を合わせた結果を示す。
 (1)内容:“写真”(40.3%)、“名前”(24.2%)、“悪口”(11.3%)、“出来事”(11.3%)、“内輪ネタ”(4.8%)、“趣味”(3.2%)、“SNSのID”(3.2%)、“出身高校”(1.6%)の8カテゴリーに分類された。写真や名前といった識別情報(佐藤・太幡, 2014)が多く挙げられたため、他者情報公開の問題は識別情報の公開に関するものが多いと考えられる。
 (2)関係:“友人”(77.4%)、“目上の人” (11.3%)、“立場が同じ人”(8.1%)、“目下の人”(1.6%)、“元恋人”(1.6%)の5カテゴリーに分類された。関わりの多い者との間で他者情報公開の問題が生じていると考えられる。
 (3)手段:“Twitter”(61.3%)、“LINE”(16.1%)、“Facebook, mixi”(9.7%)、“ホームページ”(4.8%)、“Skype”(4.8%)、“動画投稿サイト”(3.2%)の6カテゴリーに分類された。
 (4)変化:“変化なし”(74.2%)、“距離を置いた”(11.3%)、“和解した”(11.3%)、“距離が縮まった”(3.2%)の4カテゴリーに分類された。
 (5)公開した理由:“面白かったから”(24.1%)、“会話の流れ”(24.1%)、“思い出だから”(17.2%)、“頭にきたから”(13.8%)、“第三者に聞かれたから”(6.9%)、“伝えたかったから”(6.9%)、“許可を得たから”(3.4%)、“他の人も知っていると思ったから”(3.4%)の8カテゴリーに分類された。情報公開について相手から許可を得ていない場合が多いと推察される。
 (6)相手の気持ちを知った経緯:“対面で直接言われた”(37.9%)、“CMC上で言われた”(37.9%)、“相手の様子から推測した” (13.8%)、“第三者に言われた”(10.3%)の4カテゴリーに分類された。他者情報を公開された相手から嫌な気持ちになったことを直接伝えられている場合が多いと考えられる。
 (7)嫌な気持ちになった理由:“無断で公開されたから”(33.3%)、“特定されるのが不安だから”(27.3%)、“名前を公開されたから”(15.2%)、“顔写真を公開されたから”(9.1%)、“間接的に言われたから”(9.1%)、“関係が壊れるか不安だから”(3.0%)、“本音が聞けたから”(3.0%)の7カテゴリーに分類された。主な理由として、情報を統制する権利を奪われたことと、写真や名前といった識別情報を公開されたことが挙げられていた。
 (8)嫌な気持ちになったことを相手に伝えたか:“伝えていない” (54.5%)、“はっきり伝えた”(33.3%)、“遠まわしに伝えた”(12.1%)の3カテゴリーに分類された。嫌な気持ちになったことを公開した者に明確に伝えていない場合が多いことが示された。内容について、された経験の方がした経験に比べ、“写真”(48.5% vs. 31.0%)、“名前”(33.3% vs. 13.8%)が多くみられたことと併せると、情報を公開した者は、公開された者が嫌な気持ちになったことに気づいていない場合も多いと推察される。

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