発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-024

役割葛藤・役割曖昧性が介護職の職務満足に及ぼす影響—介護福祉士資格と経験年数に着目して—

[責任発表者] 大竹 恵子:1
[連名発表者] 久保 真人:1
1:同志社大学

目 的
 近年、日本では介護職の人材不足が懸念されている。特に介護サービスの質の確保については、潜在的介護福祉士の存在が指摘されている。介護福祉士資格取得者に関しては、未取得者より職務満足の低さやストレス反応の高さを示す傾向が確認されており、その理由として、高い専門性や介護への理想と、現実の業務内容とのギャップ等が指摘されている。さらに、介護分野では、専門性の不明瞭さが長期的なキャリアパスに影響を及ぼす可能性も言及されている。
 本研究では、このギャップを役割葛藤・役割曖昧性(Kahn et al., 1964)と捉え、キャリア状況とともに、介護福祉士の職務満足に影響を及ぼす要因として着目し、資格有無と仕事の経験年数によって違いがあるのか、検討した。
方 法
 本研究では、「介護労働実態調査, 2011」(介護労働安定センター)の労働者調査個票データを用いる。なお、本データは、東京大学社会科学研究所付属社会調査・データアーカイブ研究センターSSJデータアーカイブから提供を受けた。
 調査時期は2011年11月1日〜30日、調査対象は介護保険指定介護サービス事業を実施する事業所に雇用される介護労働に従事する労働者51,453人で、有効回収数は18,187人(回収率:35.3%)である。本研究ではそのうち、研究の目的から、(1)介護職員を主な職種とし、(2)介護福祉士以外の国家資格等を保有しない、7,312人(分析1)を分析対象としており、分析2ではさらに経験年数が欠損しているサンプルを除いた6,870人を対象としている。
 分析項目は、現在の仕事に対する満足度(個別的職務満足,全体的職務満足)と、役割葛藤・役割曖昧性に関する項目、キャリア状況に関する項目である。
結 果
分析1:まず、全体的職務満足に関して、資格取得者と未取得者とを比較するためt検定を行った。その結果、資格取得者の方が未取得者よりも有意に低い得点を示した(t=−4.17,df=7059.58,p<.001)。
分析2:次に、「仕事経験年数5年未満・資格取得群(n=616)」、「5年未満・未取得群(n=2,235)」、「5年以上・取得群(n=3,062)」、「5年以上・未取得群(n=957)」各々において、「個別的職務満足」、「役割葛藤・役割曖昧性」、「キャリア状況」を独立変数、「全体的職務満足」を従属変数とする重回帰分析を行った。その結果、経験年数5年未満の群において、役割葛藤・役割曖昧性の有意な影響が確認できた(Table 1)。
有意な結果がみられた項目は、資格取得者は「期待される役割が明確である」、未取得者は「経営層や管理職等の管理能力が低い、業務の指示が不明確、不十分である」とキャリア状況項目の「目標にしたい先輩・同僚がいる」であった。
 一方、経験年数5年以上の群では、資格取得者、未取得者のいずれにおいても、役割葛藤・役割曖昧性やキャリア状況と、全体的職務満足との有意な関連は確認されなかった。
考 察
まず、全体的職務満足に関して、資格取得者の方が未取得者よりも有意に低く、先行研究を支持する結果となった。
その上で、職務満足の関連要因として、仕事経験年数5年未満の群においてのみ、役割葛藤・役割曖昧性の有意な関連がみられた。この結果から、介護職では特に仕事経験が浅い時期(5年未満)において、介護職への理想や期待と現実とのギャップが職務満足の低下につながる可能性が指摘できる。
 さらに、5年未満群における資格取得者と未取得者とを比較すると、取得者では「期待される役割の明確さ」という仕事の本質にかかわる役割曖昧性が職務満足と関連しているのに対し、未取得者では「経営層・管理職の管理能力・業務指示」という指導的立場の相手からの具体的な指示に関する不明確さが職務満足との関連を示している傾向が窺える。
 本研究の結果から、介護職に関して、経験年数の違いにより職務満足の関連要因が異なる可能性と、経験が浅い時期においては介護福祉士資格の有無により職務満足と関連する役割曖昧性の具体的内容が異なる可能性が示唆された。
引用文献
Kahn, R. L., Wolfe, D. M., Quinn, R. P., Snoek, J. D. & Rosenthal, R. A.(1964). Organizational stress: Studies in role conflict and ambiguity.New York: John Wiley & Sons.

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