発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-022

あたため期のマインドワンダリングが独自性を促進する

[責任発表者] 山岡 明奈:1
[連名発表者] 湯川 進太郎:1
1:筑波大学

目 的
 マインドワンダリング(以下,MWとする)は,現在行っている課題から注意が逸れて内的世界へ向かい,思考がさまよう現象である。Baird, Smallwood, Mrazek, Kam, Frabklin & Schooler(2012)は,創造的な問題解決は,一時的に中断するあたため期によって成績が向上するが(孵化効果),それはあたため期にMWが頻繁に起こるためであると報告した。特にあたため期に,難しい課題か,簡単な課題か,休憩をさせた場合,簡単な課題群で,最もMWが生じたと報告している。ただ,MWは認知的負荷の低い状態にある場合に生じやすいことを考えると,むしろ休憩群においてMWがより多く生じる可能性が高いのではないだろうか。そこで本研究では,Baird, et al. (2012)のパラダイムに沿ってMWと創造性について検討する。
 この際,創造性は流暢性,独自性,柔軟性の3側面が重要だと考えられている。しかし,これら3側面を同時に検討している研究はこれまで見当たらない。そこで本研究では,最も古典的な創造性テストの1つであるUnusual Uses Test (Guilford, 1967; 以下,UUTとする)を用いて,あたため期のMWが促進するのは,創造性のどの側面なのかを検討する。

方 法
実験参加者 関東の国立大学に所属する大学生62名であった。そのうち,回答に矛盾があったものと,実験手続の理解が不十分であったもののデータを除き,59名を分析対象とした。(男23名,女36名,平均年齢20.36±1.23歳)。
刺激 (1)UUT:日常で使うモノの通常とは異なる使い方をできるだけ多くあげるよう求めた。事前の予備調査に基づき,”段ボール”と”鉛筆”を出題した。(2)あたため期の課題:事前の予備実験に基づき,難しい課題では2-back課題,簡単な課題では0-back課題を行った。
質問紙の構成 (1)Mind-Wandering Questionnaire (Mrazek, Phillips, Franklin, Broadway & Schooler, 2013;以下,MWQとする): 日本語版(梶村・野村, 準備中)を用いた。日頃のMW傾向を測定する全5項目について,“1:全くない”〜“6:常にある”の6件法で回答を求めた。(2)ストレス状態質問紙(奥村・津田・矢島, 2004):MW生起頻度を尋ねる全8項目について,“1:全然ない”〜“5:常にある”の5件法で尋ねた。
手続き はじめに倫理的配慮を説明し,実験参加の同意を得た。次に,パソコン画面上でUUT(1回目)を実施した(回答時間は1題につき2分間×2題=4分間)。あたため期を設けた群では,それぞれ難しい課題か,簡単な課題か,座って休憩を12分間行うよう求めた。あたため期のMW生起頻度をストレス状態質問紙を用いて尋ねた後,UUT(2回目)を実施した。あたため期なし群では,1回目のUUTの直後に2回目を行った。なお,事前の調査でMWQを用いてMW傾向を測定した。
採点方法 UUTを流暢性,柔軟性,独自性の側面から採点した。流暢性は回答数を得点とした。柔軟性は回答のカテゴリー数を大学生2人に評定させ,平均点を得点とした。独自性は,重複した回答が,全回答の1〜5%の個数ならば1点,1%未満ならば2点を与える方法を用いた。

結 果
MW生起頻度 あたため期のMW生起頻度をFigure 1に示した。MW傾向とMW生起頻度が有意な正の相関を示したため(r=.35, p=.02),MW傾向を共変量,あたため期(難しい課題・簡単な課題・休憩)を独立変数,MW生起頻度を従属変数とした共分散分析を行った。その結果,有意差がみられ(F(2,41) = 5.15, p=.01, ηp2=.14),難しい課題群よりも,休憩群においてMWが有意に多く生じていた(p=.01, d=1.00)。
UUTの得点 あたため期の過ごし方に関係なく,MW生起頻度(高・低)によって群分けをし,UUTの得点の向上に差があるかを検討した。先行研究に基づき,UUT得点の”変化率”を算出してt検定を行ったところ,有意な差は見られなかった。そこで,2回目のUUTの回答のうち,1回目にはみられなかった回答のみを採点したところ(以下,新回答とする),新回答の独自性において,MW高群(M=8.02±6.49)が低群(M=4.81±2.15)より有意に得点が高かった(t(43)=2.16, p=.036, d=.65)。

考 察
あたため期中は,予測通り,簡単な課題を行っているよりもむしろ,ただ座って休憩をしている時の方が,MWが頻繁に生じた。また,あたため期の過ごし方に関係なく,MWが頻繁に生じた人ほど,新たに浮かんだ回答の独自性がより高いことが示唆された。これらの結果から,あたため期のMWによって,他者と重複しない稀な発想が促進されたと考えられる。今後は,認知的脱抑制やワーキングメモリ容量に着目して,そのメカニズムや関連を検討していく必要がある。

引用文献
Baird, B., Smallwood, J., Mrazek, M. D., Kam, J. W. Y., Franklin, M. S., & Schooler, J. W. (2012). Inspired by distraction: Mind-wandering facilitates creative incubation. Psychological Science, 23, 1117-1122.
Guilford, J. P. (1967). The nature of human intelligence. New York, NY: McGraw-Hill.
奥村 尚昌・津田 彰・矢島 潤平 (2004). ストレス状態質問紙. 青木 和夫・長田 久雄・児玉 昌久・小杉 正太郎・坂野 雄二(編)ストレススケールガイドブック. 実務教育出版, 214-220.

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版