発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-020

中高年者における怒り反すう特性とストレス反応との関連

[責任発表者] 八田 武俊:1
[連名発表者] 八田 純子:2, [連名発表者] 岩原 昭彦:3, [連名発表者] 堀田 千絵:4, [連名発表者] 伊藤 恵美:5, [連名発表者] 永原 直子:6, [連名発表者] 藤原 和美:4, [連名発表者] 八田 武志:4
1:岐阜医療科学大学, 2:愛知学院大学, 3:和歌山県立医科大学, 4:関西福祉科学大学, 5:名古屋大学, 6:大阪健康福祉短期大学

目 的
 怒り反すう特性とは怒り体験の非意図的で再帰的な思考に努める傾向を指し,怒りの表出を抑制しやすい個人特性と正の相関関係にあることなどから抑圧された怒りが怒り反すうの材料となりやすいことが指摘されている(Sukhodolskyら, 2001; 八田ら, 2013)。また,怒り反すう特性は悲しみや抑うつに関する反すう特性と正の相関関係にあることが示されており (Gilbertら, 2005; Whitmerら, 2012),反すうはネガティブ情動を持続させることが示されている(Nolen-Hoeksemaら, 1994)。不快情動である怒りはストレッサーとなる出来事や対象によって生じるストレス反応であるが,一方では,怒り自体がストレッサーとなる場合もある(渡辺, 2008)。ストレッサーに対する評価などの認知的次元を重視するLazarusら (1984)は,ある環境や対象がストレッサーとなるかどうかは個人の評価によって異なり,ストレッサーに対する認知的評価とその対処方略によってストレス反応が生じると論じている。つまり,抑圧された怒りはそれ自体がストレス反応を生じさせることからストレッサーにもなりうると考えられる。これらのことから,怒り反すう特性が高いほどストレス反応も強いと予想される。

方 法
参加者 
対象者は41歳から86歳までの北海道Y町の住民249名(男性108名,女性141名)で,2010年,または2012年の生活調査票に含まれる日本語版怒り反すう尺度について回答漏れがなく,さらに2014年の生活調査票について回答した人々である。なお,2010年と2012年の両方に回答した人は,最新の2012年のデータを採用した。参加者の平均年齢は64.32歳,標準偏差は8.59歳であった。

質問項目
 質問調査票は様々な研究目的から複数の尺度や多岐にわたる質問項目で構成されており, 本研究で用いた17項目からなる日本語版怒り反すう尺度(八田ら, 2013)も2010年度と2012年度の質問紙調査票の一部として含まれていた。すべての項目について「ほとんどない」「時々ある」「しばしばある」「ほとんどいつも」の4件法で回答を求めた。また,2014年度の質問調査票では,ストレス反応の測定として24項目からなるPublic Health Research Foundationストレスチェックリスト・ショートフォーム(PHRF-SCL) (今津ら, 2006)を用いた。各下位尺度は「不安・不確実感」「疲労・身体反応」「自律神経症状」「うつ気分・不全感」のそれぞれに関する6項目からなり,すべての項目に,「ない」「ときどきある」「よくある」
の3件法で回答を求めた。
結 果
 本研究における怒り反すう尺度の総得点と下位尺度得点,PHRF-SCLの各下位尺度得点を要因とする相関分析を行ったところ,表1に示したように疲労・身体反応得点のみ有意な相関関係が示された。怒り反すう特性のうち,熟考と怒り体験想起要因の得点が高いほど,疲労・身体反応得点も高かった。

また,中央値を基準に怒り反すう高群(N = 128)と低群(N = 121)を設け,これを怒り反すう要因とし,PHRF-SCLの下位尺度得点を従属変数,怒り反すう特性要因と性別を独立変数とする分散分析を行ったところ,「疲労・身体反応」「自律神経症状」得点において女性は男性よりも得点が有意に高く(F (1, 25) = 13.65; 7.66, ps < .01),「疲労・身体反応」においてのみ,怒り反すう特性が強い人はそうでない人よりも得点が有意に高かった(F (1, 25) = 11.55, p < .01)。

考 察
本研究の結果は,中高年者における怒り反すう特性が疲労感などの身体的反応と関連することを示している。疲労・身体的反応尺度に含まれる項目は「体がだるく疲れがとれない」「頭がスッキリしない」などで,これらは明確なストレッサーによって一時的に引き起こされるストレス反応というよりは,持続的なストレス反応であると考えられる。怒り反すうは抑圧された怒りが対象となりやすいことや怒りの持続をもたらすことから,持続的なストレス反応を生じさせると考えられる。ただし,報復思考得点と疲労・身体反応との間に有意な相関関係はみられなかった。おそらく,怒り反すうのうち,怒り熟考や怒り体験想起といった怒りの再評価に関する反すうがストレス反応に関連すると思われる。

引用文献
Gilbert P, Cheung M, Irons C, McEwan K.. Behavioural and Cognitive Psychotherapy, 33, 273-283. 2005.
八田武俊・大渕憲一・八田純子. (2013). 応用心理学研究, 38(3), 231-238.
今津芳恵・村上正人・小林恵・松野俊夫・椎原康史・石原慶子・城佳子・児玉昌久. (2006). 心身医学, 46(4), 301-308.
Lazarus RS, Folkman S. Stress, Appraisal, and Coping. Springer. 1984.
Nolen-Hoeksema, S., Parker, L. E., & Larson, J. (1994). Journal of Personality and Social Psychology, 67(1), 92-104.
Sukhodolsky, DG., Golub, A., & Cromwell, EN. (2001). Personality and Individual Differences, 31, 689-700.
渡辺俊太郎 (2008). 怒りの健康への影響. 怒りの心理学, 75-94. 有斐閣.
Whtmer, AJ, Gotlib, IH. (2013) Psychological Bulletin, 139(5), 1036-1061.
(*本研究は平成24-26年度科学研究費補助金(若手研究B)の助成を得て実施された研究成果の一部である)

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