発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-019

ブランド態度形成における自己と他者−他者への信頼レベルによる比較

[責任発表者] 杉谷 陽子:1
1:上智大学

目 的
 本研究の目的は、好意的ブランド態度は、どのように形成されているかを明らかにすることである。態度の構成要素は、先行研究では「感情」と「認知」の2次元から論じられてきたが(e.g. (Bodur, Brinberg, and Coupey 2000; Crano and Prislin 2006)、本研究は、認知と感情に加え、評価のベースとしての「自己」と「他者」という新しい視点を提唱する。
消費者は、自らの経験を通じて得た情報や自分の主観に基づいてブランドを評価していることもあれば、自分はよく知らないブランドでも、周囲の評判や他人から聞いた情報に基づいてブランドを評価している場合もある。例えば、実際に商品を買って使ってみて、そのパフォーマンスが大変に高いこと実感した場合、「この商品は非常に便利だな」「非常に役に立つ商品だ」という評価が生まれる。これは、「自己」の経験にもとづく「認知的評価」が行われたと定義できる。そうではなく、マスコミやネットの評判でその製品のパフォーマンスが高いことを聞いて、これはいいブランドだな、と思っている場合は、「他者」の評価に基づく「認知的評価」が行われたと言える。ブランドに対する感情においても同様で、自分で実際に使用してみて生じる感情(例:「自分らしい感じがする」「愛着を感じる」)と、周囲がどう評価しているかを反映して生じる感情(例:「おしゃれだ」、「ステータスが高い」)がある。したがって本研究では、ブランド態度の構成要素は、「自己ベース認知的評価」「他者ベース認知的評価」「自己ベース感情的評価」「他者ベース感情的評価」の4次元で捉えられるだろうと予測した。これが本研究の仮説である。
本来非常に多様なブランド評価を、「自己ベース」と「他者ベース」という視点から分類することの妥当性を示すには、因子分析によって4つに因子が分かれることを示すのみならず、理論的に関連があると想定される変数との関係性からも検証する必要があるだろう。様々な変数が候補となり得たが、本研究では、「他人への信頼感」が高いか低いかによって調査回答者を分類し、4因子がブランド態度を説明できる程度を比較することとした。他者への信頼感が高い消費者において「他者ベース評価」が、他者への信頼感が低い消費者において「自己ベース評価」が、ブランド態度の有意な説明変数であれば、ブランド評価を「自己」と「他者」という視点で整理できるという本研究の主張を裏付けるものと解釈できる。
方 法
調査対象: 調査会社の保有するパネルよりランダムに抽出された日本人および米国人(ハワイ州・アラスカ州を除く)各200名。対象年齢は25歳から59歳までとし、各年代で男女の均等割り付けを行った。
手続き:調査の冒頭で、「好きなファッションブランド」を1つ回答させた(「ない」場合は、その時点で調査終了)。そのブランドについて、次に示す1〜4について回答させた。
質問紙: 1.全体的ブランド態度(1項目)、2.ブランドに対する認知的評価(9項目「便利な」「使い勝手が良い」「技術に定評がある」「信頼できる」等)、3.ブランドに対する感情的評価(13項目「自分らしい」「おしゃれな」「かっこいい」「自分とつながっている感じがある」等)、4.他者への信頼感(1項目)であった。
結 果 と 考 察
 ブランド評価に対して探索的因子分析を実施した結果、仮説通りの4因子が抽出された。そこで、高信頼者群と低信頼者群で、Amosによる共分散構造分析(多母集団同時分析)を実施した。その結果、高信頼者群と低信頼者群でブランド態度の予測因が仮説通り異なっていることが示された(表参照)。高信頼者では、「他者認知因子」と「他者感情因子」がブランド態度の有意な予測因であり、他人の評判に基づいてブランドを評価している様子が示された。一方、低信頼者では、「自己感情因子」が有意傾向であった。「自己認知因子」については有意傾向にも届かなかったものの、係数がマイナスとなり、「自己認知因子」(便利さなどの評価)はブランド態度に対して負の影響力を持つ可能性も示唆された。ただし、モデルの適合度指標はあまり良好な値ではなかったため(χ2=696.2, p<.01, GFI=.84, AGFI=.79, RMSEA=.06, CFI=.91, NFI=.87)、以上の解釈には慎重を要する。他の変数の影響についても今後詳細に検討を行う必要があるだろう。
 なお、紙面の都合上割愛したが、「他者への信頼感」の高低は、質問紙で回答を得た様々な購買関連行動と関連があることが分かった。例えば、高信頼者は自らの態度への確信度が高く、「今後も当該ブランドを購買し続ける」と答える傾向があり、「普段からネット上のクチコミをよく読む」と答えていた。高信頼者のブランド態度は他者の評価に支えられているために、自信を持ちやすく、購買への確信が高くなりやすいのだろう。しかし、先行研究では、実際の購買行動については「自己感情因子」が有意な予測因であることがわかっており、高信頼者における態度の確信度は必ずしも行動にはつながらない可能性もある。

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版