発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-015

「共生志向」に影響を及ぼす要因の検討 −仮説モデルに基づく探索的検討−

[責任発表者] 新井 雅:1
1:健康科学大学

目 的
多様な他者や社会,自然環境などとの「共生」は,現代の人間社会における一つの重要なテーマとなっている。これまでの研究を概観すると,「共生」に関わる社会意識の探索が内閣府によって行われ(共生社会形成促進のための政策研究会,2005),「共生社会」という言葉の浸透の状況が示されるとともに,今後の政策課題が見出されている。心理学でも多様な他者との交流の中で生じる差別や偏見のメカニズムの解明と改善に向けて多数の知見が蓄積されている(池上,2014)。2016年に開催される国際心理学会議(ICP)においても「Diversity in Harmony : Insights from Psychology」と題し,人種や文化の違い,伝統と現代性,若者と高齢者など様々な多様性の中で,人間が抱える社会問題に対して心理学がどう貢献できるかが大きなテーマとなっている。
そのような中,2014年に筑波大学人間系研究戦略委員会の活動の一環として「共生社会に関する調査」(岡本・坂口,2014)が行われた。本調査では社会の中の多様性についての諸個人の認識を明らかにするとともに,その関連要因となり得る属性や社会的経験について詳細な分析が行われている。特に,新井・桜井(2014)は,障害者・外国人・高齢者への関わり方,社会的な施策,日本と外国との関係などに関する人々の「共生志向」的な意識や態度へとつながる要因について包括的に検討している。本発表では,新井・桜井(2014)による分析のうち,「共生に関連した職場経験や障害者・外国人・高齢者との接触・交流経験」が,「「共生社会」という言葉の認知や共生社会に関する問題として想起するイメージ」を媒介として,「「共生志向」的な意識や態度」に影響を及ぼすという仮説モデルについて検討した結果を報告する。
方 法
(1)調査実施時期:2014 年1月10 日〜13 日。(2)対象:ウェブ調査。全国の成人を対象。インターネット調査専門会社に登録している20 歳以上のモニタより,性別・年齢・居住地域ごとに日本の総人口に比例した人口構成比で計2000 名を抽出。(3)調査内容:基本属性,就業,家庭状況,共生社会の認識と態度,高齢者・障害者・外国人に対する意識,日本社会への態度など計45 問。新井・桜井(2014)の分析では仮説モデルの検討に必要な項目を選択的に使用した。
結果と考察
仮説モデルに基づきパス解析を行った(Figure 1:1%水準で有意であった標準偏回帰係数を示した)。モデルの説明力の低さに留意が必要であるものの,「共生に関連した経験・体験」が「共生志向」に直接的に影響しつつ,「共生に関する認知やイメージ」を媒介して影響を及ぼしていた。「共生志向」の向上には,「共生に関連した経験」を積み重ね,「共生に関する認知やイメージ」を深めることが重要と考えられる。特に,日常生活の中で障害者や外国人,高齢者等が身近におり,接触・交流したり生活を共にしていることが共生社会に関する認識を高め,「共生志向」の向上につながる可能性がある。人々の「共生志向」の向上や共生社会実現のため,本調査結果を基礎としつつ,心理学および他分野の研究知見を総合しながらさらに検討を重ねる必要がある。
主要引用文献
新井雅・桜井淳平 (2014) 「共生志向」に影響を及ぼす要因の検討 岡本智周・坂口真康編 共生社会に関する調査─2014年調査報告─ 筑波大学人間系研究戦略委員会,pp. 18−35.

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