発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-012

化粧意識の世代間差異

[責任発表者] 城 仁士:1
1:神戸大学

目 的
 先行研究として、1)化粧意識と年齢の相違に関するものと2)化粧意識とその構造に関するものとがある。前者は化粧意識を規定する心理要因の検討までには至っておらず、また後者は世代が限定されており、世代の差異による化粧意識の変化までは検討されていない。そこで本研究では、化粧意識とそれを規定する要因として自意識や他者意識との関係を構造的に捉え、これらの構造的関係の世代よる差異を検討することを目的とし、以下の仮説を立てた。
 【仮説1】若い世代は恋愛や社会進出をきっかけに公的自意識と外的他者意識が強くなり、化粧行為にも自身の魅力向上や身だしなみを強く意識するであろう。
 【仮説2】年齢が高まるにつれて、世間体への意識は固定化する分、私的自意識が強くなり、化粧行為にも心身の充足やリラクセーションを強く意識するようになるであろう。
方 法
 【調査対象者】15歳〜69歳の女性142名。対象者の世代の構成人数を勘案し、15〜19歳の女性24名、20〜34歳の女性45名、35〜49歳の女性32名、50歳以上の女性41名とした。
 【調査期間】2014年7月下旬〜10月下旬。
【調査項目】「世代間における女性の化粧動機に関するアンケート」を以下の質問項目により構成した。
 1.年齢・現在の職業・恋愛ステータス(選択形式)
 現在の職業:学生(高校生・大学生)、有職(正規・非正
 規/対面業務・非対面業務)、専業主婦、その他
 恋愛ステータス:独身(恋人なし・恋人あり)、既婚
 2.自意識項目:菅原(1994)「自意識尺度」21項目。
 3.他者意識項目:辻(1993)「他者意識尺度」15項目。
 4.化粧意識項目:平松(2009)「化粧意識尺度」34項目。
 2.〜4.の各項目について、「あてはまる」(5点)から「あてはまらない」(1点)までの5件法で評定してもらった。
【調査手続き】
 各世代の知人を通じてアンケート配布と回収を行った。遠方には取り纏め担当者宛にアンケート用紙を郵送し、回答が揃い次第返送してもらう方法をとった。
結果と考察
 自意識と他者意識の因子分析と世代間差異
 因子分析(主因子法、バリマックス法、回転後因子負荷量基準.50以上)の結果、自意識は、「公的自意識」(α=.92)と「私的自意識」(α=.71)の2因子が抽出された。他者意識は、「外的他者意識」(α=.90)、「内的他者意識」(α=.89)、「空想的他者意識」(α=.78)の3因子から構成されることがわかった。また、一元配置分散分析(Tukey法)による世代間比較によって以下の点が有意であった。
 自意識において「公的自意識」は20〜34歳の女性が50歳以上の女性よりも高かった(p<.01)。これは、20〜34歳は対面業務の有職者の割合が高く、自分自身が他者からの目に晒される機会が多いという点で自分の見た目を気にする心理が強くなると推察した。それに対し50歳以上は専業主婦の割合が高く、家族や近所の人々といった顔を合わせる対象が次第に固定化されていくという点で、自分の見た目に構わなくなってしまうのではないかと推察される。次に、「私的自意識」は50歳以上の女性が15〜19歳の女性より高かった(p<.01)。これは、自分の内面の向上より見た目の向上に注力する15〜19歳の女性に対し、50歳以上の女性は、自己の外面よりも内面の充足を意識するようになると推察される。
 また、他者意識において「内的他者意識」は20〜34歳の女性が15〜19歳(p<.01)、35〜49歳(p<.05)、50歳以上(p<.01)の女性よりも高かった。これは、世代の中で有職者の割合が高く、社会での複雑な人間関係を乗り越えていかなければならない最初の世代(20〜34歳)として内的他者を強く意識しなければならないことに起因していると推察される。
 化粧意識の因子分析と世代間差異
 因子分析(主因子法、プロマックス法、回転後因子負荷量基準.05以上)の結果、化粧意識は、「身だしなみ」(α=.87)、「気力向上」(α=.83)、「関心」(α=.74)の3因子で説明できることがわかった。また、一元配置分散分析(Tukey法)による世代間比較によって以下の点が有意であった。
 化粧意識において「関心」は50歳以上の女性が15〜19歳(p<.01)、20〜34歳(p<.01)、35〜49歳(p<.01)の女性よりも低いことがわかった。これは化粧経験時間の長さの反映であると推察される。
 自意識と他者意識の化粧意識への因果分析
 世代間における自意識2因子と他者意識3因子が、化粧意識3因子それぞれに与える因果関係について強制投入法による重回帰分析で検討した。
 15〜19歳の女性においては、「外的他者意識」(β=.92、p<.01)が「身だしなみ」に、「公的自意識」(β=1.06、p<.05)が「関心」に影響することがわかった。20〜34歳の女性においては、「公的自意識」(β=.93、p<.01)と「私的自意識」(β=.15、p<.05)、「内的他者意識」(β=.24、p<.01)が「身だしなみ」に、「私的自意識」(β=.69、p<.01)と「外的他者意識」(β=.45、p<.01)が「気力向上」に、そして「公的自意識」(β=1.49、p<.01)と「私的自意識」(β=.29、p<.01)が「関心」に影響することが明らかになった。35〜49歳の女性においては「公的自意識」(β=.65、p<.01)と「外的他者意識」(β=.32、p<.01)が「身だしなみ」に、「外的他者意識」(β=.63、p<.01)と「内的他者意識」(β=.34、p<.05)が「気力向上」に、「公的自意識」(β=.61、p<.01)と「私的自意識」(β=.37、p<.05)、「外的他者意識」(β=.58、p<.01)が「関心」に影響することが示された。50歳以上の女性においては「公的自意識」(β=.80、p<.01)と「外的他者意識」(β=.33、p<.01)が「身だしなみ」に、「私的自意識」(β=.39、p<.05)が「気力向上」に、「内的他者意識」(β=.53、p<.01)が「関心」に影響していることがわかった。
 以上のように、「公的自意識」と化粧意識における「関心」については一元配置分散分析での世代間の主効果に有意差が見られたが、「他者意識」3因子と化粧意識における「身だしなみ」、「気力向上」においては世代間の主効果に有意差が見られなかった。そのため、仮説1、2は部分的にしか支持されなかったが、「身だしなみ」、「気力向上」は世代を超えた意識であると言える。
引用文献
平松隆円 2009 化粧にみる日本文化—だれのためによそおうのか? 水曜社 278-292.
菅原健介 1984 自意識尺度(self-consciousness scale)日本語版作成の試み 心理学研究, 55, 184-188.
辻平治郎 1993 自己意識と他者意識 北大路書房

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