発表

一般研究発表(ポスター)
3EV-040

うつ病に対する認知行動療法による内側前頭前野—前帯状回間の機能的結合性の変化について

[責任発表者] 吉村 晋平:1
[連名発表者] 岡本 泰昌#:2, [連名発表者] 松永 美希:3, [連名発表者] 國里 愛彦:4, [連名発表者] 小野田 慶一:5, [連名発表者] 鈴木 伸一:6, [連名発表者] 山脇 成人#:2
1:追手門学院大学, 2:広島大学, 3:立教大学, 4:専修大学, 5:島根大学, 6:早稲田大学人間科学学術院

目 的
 近年、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)に関する脳機能画像研究はfunctional magnetic resonance imaging(fMRI)を中心として、増加傾向にある。これまでの我々は、うつ病に対するCBT前後では、内側前頭前野(MPFC)および前帯状回(ACC)が自己に対するネガティブな関連付けにおいて活動の変化が見られることを明らかにしている(Yoshimura et al 2014)。しかし、うつ病に対するCBTが特定の脳活動に対して影響することは示されてきたものの、脳領域間のネットワークに対してどのような影響を与えるかはほとんど明らかにされていない。そこで、本研究では、CBT前後の機能的結合性を指標とし、CBTの脳領域間のネットワークに対する影響を検討することを目的とした。
方 法
<研究参加者> DSMに基づいた大うつ病性障害の患者29名(男性21名,女性8名;平均37.5±7.1歳)、および健常者15名(男性8名,女性7名;平均36.7±8.2歳)を対象とした。研究参加者は広島大学倫理委員会のプロトコルに則った説明を受け、研究参加同意書に署名した。
<尺度> Beck Depression Inventory(BDI)をうつ症状の測定尺度とし、Dysfunctional Attitude Scale(DAS)を抑うつ的認知の測定尺度とした。うつ病患者は、これらの尺度にCBT前後に回答した。
<介入> うつ病患者は週1回90分、全12回に及ぶ集団CBTに参加した(Yoshimura et al 2014)。
<実験課題> ポジティブ語およびネガティブ語を刺激とした自己関連付け課題を行った(Yoshimura et al 2014)。自己関連付け課題では、研究参加者に対して刺激語が自己に当てはまるかを“はい”もしくは“いいえ”のどちらかの選択肢を選ぶことによって示すよう教示した。また、対照条件として刺激語の意味・形態処理を行う条件を設けた。
<fMRI撮像> 1.5 Tesla(Siemens社製,Symphony)のMRIを使用した。MRI撮像中に自己関連付け課題をブロックデザインで実施した。うつ病患者の参加者はCBT前後に計2回の撮像を行い、健常者は1回目の撮像データを使用した。撮像された画像はSPM12を用いて前処理と統計解析を行った。自己関連付け課題遂行中の脳活動については、Yoshimura et al(2014)においてCBT前後の賦活の変化が現れたMPFC(MNI coordinates[-6,44,44]; sphere 7 mm)をseed regionとしてpsycho-physiological interaction(PPI)解析を行った。PPI解析では、ネガティブ語に対する自己関連付けと対象条件のコントラストを使用した。集団解析では、pre_CBT群vs. post_CBT群vs.健常者(healthy)のone-way ANOVAを実施した(Uncorrected p<0.001, over 5 voxels)。さらに、MPFCのcoupled regionの機能的結合性の推定値と、各心理尺度合計得点との相関分析を行った。うつ病患者29名の内2名はDASの測定が行えなかったため、相関分析からは除外した。
結 果
 one-way ANOVAを実施した結果、coupled regionとしてACC(-2, 52, -16)に有意な主効果が見られ、pre_CBT>post_CBT=healthy(all p< 0.01) であった(Figure1)。
 pre_CBT群におけるMPFC-ACC間の結合性の値は、治療後のDAS得点(r=0.42, p<0.05)とBDI得点(r=0.42,p<0.05)に有意な相関がみられた。媒介分析を行ったところ、MPFC-ACC間の結合性と治療後のBDI得点の相関に、CBT後のDAS得点が媒介変数となることが示された(sobel test,z=1.87, p<0.05, one-tailed)。
考 察
CBTがMPFC-ACC間の機能的結合性を低下させ、この結合性の変容は抑うつ的認知を介在して、抑うつ症状に影響することも明らかになった。これらの結果は、CBTの神経科学的作用機序に新たな知見を加えるものと考えられる。
引用文献
Yoshimura, S., Okamoto, Y., Onoda, K., Matsunaga, M., Okada, G., Kunisato, Y., ... & Yamawaki, S. (2014). Social cognitive and affective neuroscience, 9(4), 487-493
謝 辞
本研究は文科省脳プロ課題F(うつ病)、JSPS KAKENHI 25780413の助成を受けて行われた。

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版