発表

一般研究発表(ポスター)
2EV-131

上司・先輩教員の声掛けと新任教員のメンタルヘルスとの関連

[責任発表者] 弘嶋 沙也茄:1
[連名発表者] 中村 菜々子:1, [連名発表者] 松永 美希:2, [連名発表者] 古谷 嘉一郎:3, [連名発表者] 三浦 正江:4
1:兵庫教育大学, 2:立教大学, 3:北海学園大学, 4:東京家政大学

目 的
近年、新任教員のメンタルヘルスへの対応が求められている(文部科学省, 2012)。新任教員にはリアリティ・ショックのような新任期特有のストレス反応を高める要因があるが (原田ら, 2009)、上司からの声掛けが新任教員のストレス反応を緩和する可能性が指摘されている(中村ら, 2014)。
声掛けの影響について、小野寺ら(1986)は、三隅(1984)のリーダーシップ理論のPM理論に基づき、M行動には部下を激励・支持し、部下の自主性を尊重する「期待支持」(例「頼りにしているよ」)と、現状を肯定する性質の強い「現状保守」(例「お疲れ様」)の声掛けがあることを示唆した。
本研究では、1)普段の職場環境で、新任教員がどの程度上司・先輩教員からの声掛けを認知しているのか、またその声掛けに対して生じている感情の実態を明らかにし、新任教員が認知した上司・先輩教員の声掛けと新任教員のメンタルヘルスとの関連を明らかにすることを目的とする。
方 法
 調査協力者と手続き 立教大学倫理委員会の承認を得て、2014年7月、10月、2015年1月にA 県B市に勤務する小・中学校の新任教員110名を対象に、研修時に質問紙調査を実施した。3回の調査に全て回答した102名(男性37名、女性65名、平均25.56歳SD=6.06)を分析対象者とした。
調査内容 a)フェイスシート、b)教師用リアリティ・ショック尺度(原田ら,2009)、c)K6日本語版(古川ら,2003)、d)声掛けの認知量[小野寺ら(1986)を参考に期待支持と現状保守の声掛けを受けたと認知している程度を測定、5件法]、 e)声掛けに対する感情[小川(2011)を参考に、全9項目を準備し、各声掛けに対して当てはまる感情を全て選ぶ形式で測定]。
結果と考察
K6とリアリティ・ショックの変化 各時点で、K6の平均値は11.86(4.53)、12.67(4.91)、12.35(5.12)、リアリティ・ショック合計平均値は51.48(7.73)、49.10(7.70)、48.40(7.26)、であった[7,10, 1月, ( )内はSD]。 
声掛けの経時変化(Table1) 各時点の両声掛けの認知量の差についてt検定を実施した結果、各時期で現状保守の方が期待支持よりも多く認知されていた[t(101)=−14.00,p<.01, t(101)=−8.69, p<.01, t(100)=−8.80, p<.01]。次に各声掛けの認知量の1年間の変化について繰り返しのある分散分析を行った結果、期待支持は7月に比べ1月で有意に多く認知されていた[F(2,200)=5.07,p<.05]。一方、現状保守は7月に比べ、10月と1月で有意に少なく認知されていた[F(2,200)= 8.37, p<.05]。声掛けに対する感情は肯定的に受け取る人が多いが、期待支持では恥ずかしさ、現状保守では情けなさを感じる人が確認され、声掛け毎に違いが見られた。
新任教員が認知した声掛けは、各時点とも労いの声掛けの方が多かった。また、期待を示す声掛けの認知量は1年間を通して増加傾向にあるのに対し、労いの声掛けは初期には多く認知されているが、年度末には減少傾向にあるという実態が明らかとなった。
声掛けの精神的健康への影響(Table2) 声掛けの認知量と声掛けに対する感情がメンタルヘルスに及ぼす効果を検討するために、階層的重回帰分析を行った。従属変数は10月のK6とし、Step1では統制変数(性別, 経験年数,7月のK6, 7月のリアリティ・ショック)、step2では7月の両声掛けの認知量、各声掛けに対する感情、step3では、各感情の交互作用項を投入した。分析の結果、現状保守の声掛けに対するポジティブ感情の主効果が有意傾向であった(β=−.20,p<.10) 。
労いの声掛けを肯定的に受け取るとその後のストレス反応が緩和されることが示唆された。一方、声掛けの認知量はその後のメンタルヘルスに影響を及ぼさなかった。ソーシャル・サポート研究において、実行されたサポート(他者が実際にサポートしてくれた程度)は健康指標との関連が弱く、正の相関を示す場合もあること、受け手のニーズを考慮した上で分析を行う事で,実行されたサポートの影響が見られる可能性が指摘されている(福岡, 2007)。今後は、新任教員の声掛けやサポートに対するニーズを考慮した上で分析を行う必要がある。(科研費基盤C 23530939の適用を受けた)
文 献
小野寺孝義・三隅二不二(1986)リーダーシップPM理論におけるM2因子仮説に関する実験的研究 実験社会心理学研究26,77‐88.

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