演題

SP-5-5

周麻酔期看護師の役割

[演者] 宮坂 勝之:1
[著者] 片山 正夫:1
1:聖路加国際大学 周麻酔期看護学

 聖路加国際大学大学院が養成する「周麻酔期看護師」(Perianesthesia Nurse: 以下PAN)は、看護師として麻酔科医の業務補助を行う独自の職種である。世界に同様の役割を果たす看護師は存在するが、PANは麻酔科医の指示の下での業務であり、また手術麻酔関連業務だけでなく、麻酔前外来、手術室外の鎮静・鎮痛業務などにも関わる点で独特である。麻酔科医に代わり麻酔を担当する米国の「看護麻酔士」(CRNA)とは明確に異なる特有のシステムである。
 PANの業務は、麻酔科専門医の直接の監督のもとでの限定された医療行為を含む麻酔業務補助として、低リスク患者の手術麻酔症例、術前外来での麻酔説明、術後疼痛評価、鎮静鎮痛下検査処置などに関わる。脊・硬麻針穿刺や分離肺挿管施行などは除外されるが、麻酔の導入覚醒、体位変換や輸血開始時など、安全上重要な局面での麻酔科専門医の物理的な立ち合い、そして急変時や懸念時だけでなく症例により定めた一定間隔での担当麻酔科医への遅滞なき状況報告を義務づけている。医師一般が、准看も含む看護師一般に対して指示書により行う業務補助(丸投げ)の、看護師の特定行為とは異なる。PANの業務は従来の保助看法範囲内であり、修士教育を経て高度な業務に従事できる院内認定資格である。
 医療安全意識の高まりで、手術・処置時の術者とは独立した患者安全確保者の存在が認識され様々な侵襲下での医療の安全安楽な遂行を支える麻酔科医の業務需要は、手術麻酔管理だけに留まらない。しかし現実には現状のまま手術数増加だけが求められる。また、毎日の手術室内の麻酔業務でも、医療機器の動作確認、患者モニタ情報確認や投薬安全確認など、他では当たり前の二重確認作業など、麻酔科医の診療業務の補助はほぼ皆無である。今後10年間で予想される全身麻酔件数倍増の可能性を考えると、抜本的な改革が求められる。
 未だに外科医さえ確保すれば手術数が増えると考える病院管理者は多い。しかし同規模手術室で二倍を超える手術数も珍しくない米国と日本との際だった相違は、麻酔科業務への看護師や薬剤師など他職種の効率的な関与と麻酔科主導による手術室運営がもたらす麻酔科医の動機付けにある。
 麻酔科人材の効率的な活用と、医療の安全と質向上が同時に得られる、麻酔科医の直接の監督の下で機能する周麻酔期看護師の導入は、日本の医療事情に適合した仕組みであり、社会的認知の浸透に期待したい。

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