演題
PS-174-3
レイトレース法に基づく3D標的シミュレータの肝癌症例への使用経験 |
肝腫瘍の一部に対しアブレーションが低浸襲治療として適応となる.しかし腫瘍の部位や温存すべき脈管構造物や隣接臓器のため穿刺困難となる場合がある.このため安全性や治療成績の改善を目的に3Dシミュレーションソフトを開発し,臨床症例に対し使用したので報告する.オープンソース医用画像解析ソフトウェア3D Slicer [http://www.slicer.org]上で動作するプログラムを作成した.術前のCT画像を用い穿刺経路にある構造物(肺,肋骨,腸管や血管など)を立体化し,肝内の標的に到達し得る穿刺エリアと経路を体表モデル上のカラーマップと標的からの光線として可視化し,体表上の穿刺可能領域の面積をAccessibility Score(AS)として数量化した.はじめに当科でのマイクロ波凝固治療の臨床症例13例を用いた後ろ向き評価を行ったところ,腫瘍経が20mm以下の症例に関しては手術時間とASとの間に強い相関(Pearsonの相関係数=0.784)を認めた.この結果を受けて肝癌術前症例の画像データを本シミュレータに供した.症例は70代女性, 肝S8ドーム下に1cm大の肝細胞癌アブレーション後局所再発を認めた.本シミュレータで評価したところASは2388.0であり,脈管や肋骨, 隣接臓器など障害物を回避した最短のアプローチ経路は77.1mmと算出された. これに対し,肺を除外して再計算を行ったところ, ASは14787.3で最短経路は51.5mmとなった.画像上腫瘍のaxial level上の胸腔からのアプローチが最適と判断できたため,実際に分離肺換気全身麻酔を行い右肺を虚脱させ, 胸腔鏡下に横隔膜を切開して腫瘍を術中超音波で確認し,マイクロ波による穿刺凝固治療を施した.治療は術前にシミュレートされたアプローチ方法で容易,また視野確保に困難を感じずに行うことができた.