演題

特別ビデオセッション—メスの限界に挑戦した手術—
SV-10

心房中核欠損による肺動脈性肺高血圧症に対する脳死ドナーからの両肺移植と心内修復術

[演者] 奥村 明之進:1
[著者] 井上 匡美:1, 新谷 康:1, 南 正人:1, 舟木 壮一郎:1, 吉岡 大輔:2, 平 将生:2, 吉川 泰司:2, 上野 高義:2, 戸田 宏一:2, 澤 芳樹:2
1:大阪大学呼吸器外科, 2:大阪大学心臓血管外科

肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary artery hypertension; PAH)は様々な原因により肺動脈圧が持続的に上昇した病態で,心不全/呼吸不全が順次進行する予後不良の難治性疾患である。近年、プロスタサイクリン誘導体、エンドセリン受容体拮抗薬などの肺動脈拡張薬が開発され生命延長が得られているが、薬剤不応症例や病態が進行すると薬剤治療では制御できず、肺移植が唯一の治療手段となる。先天性心疾患を伴う場合にはアイゼンメンジャー症候群に至りチアノーゼを伴う。従来よりアイゼンメンジャー症候群には心肺同時移植が適応されており、特に心内修復の不可能な複雑心奇形では心肺同時移植以外の術式は適応とならない。しかしながら近年では、肺移植の技術的確立と成績の向上により、心内修復が可能な心房中隔欠損症や心室中隔欠損症の単純心奇形に対しては、欠損部の修復と両肺移植を同時に行うことにより救命が可能となってきている。当教室では心臓血管外科学講座との合同手術でこれまでに7例の先天性心疾患に対する臓器移植による治療を行ってきた。内訳は心肺同時移植1例、脳死下両肺移植+心内修復術4例、生体肺葉移植+心内修復術 2例であり、全例生存している。今回、心房中隔欠損症による肺動脈性肺高血圧症対する脳死ドナーからの両肺移植+心房中隔欠損閉鎖術の1例を供覧する。症例は48歳・女性、8歳時に心雑音を指摘され、17歳時に呼吸困難で、精査により上記の診断を受けた。21歳時血痰、25歳時に失神発作あり、在宅酸素療法が開始された。32歳時よりフローランが導入された。画像上、心拡大と肺動脈の著明な拡張を認め、心臓超音波検査で右心房・右心室の拡大を認めたが、左室のEFは69%であった。手術は、Clamshell incision で両側開胸し、体外循環を確立後、心房中隔欠損を縫合閉鎖した。発達した気管支動脈を切離しながら左肺を摘出し、左主気管支を吻合(膜様部は連続縫合、軟骨部はFigure of eight で結節縫合)、左肺動脈を吻合した。次に右肺の移植も同様の手順で行った。右肺動脈は著明に拡張していたため、吻合口の形成を加えた。MUFで血液ろ過した後、体外循環を離脱した。手術時間618分、体外循環時間311分であった。術後の左心機能の回復に時間を要したが、術後8か月、健在で外来通院中である。
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