演題

DB-15-1

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[演者] 齋木 佳克:1
1:東北大学心臓血管外科

1975年にGrieppらが超低体温循環停止法を用いた弓部大動脈瘤手術の成功例を報告して以来、様々な補助手段と術式の改良が加えられ極めて安定した治療成績が得られている領域がこの弓部大動脈瘤である。特に、脳保護法と遠位部吻合法の改良に関しては本邦からの多数の情報発信がなされ、日本の心臓血管外科医の得手とする分野となっている。術式としては既に標準化され、JACVSDに登録されている年間手術数も2010年には4,000例に達し、traineeでも十分に執刀できる手術として確立されている。一方、1990年代に考案され2000年以降に急速に普及したTEVARは、低侵襲性という特徴によりハイリスク症例を対象に有効性と安全性の実証が積み上げられている。2008年以降に厚生労働省が認可した企業性ステントが臨床使用可能となってからは、下行大動脈瘤に対する治療の第一選択肢としてほぼ確立され、TEVAR年間手術数も2010年には2,400例に及んでいる。特に、破裂をきたした下行大動脈瘤に対する緊急治療や多発外傷を伴う外傷性仮性大動脈瘤に対するsalvage治療に関しては、TEVARによる救命率向上には目を見張るものがある。また、臓器虚血を伴う急性B型大動脈解離に対するTEVARによる治療は、推奨レベルの高い治療選択肢としてガイドラインに呈示されるなど、その有用性が広く認知されている。しかしながら、今回のテーマである弓部大動脈瘤に対する治療法の選択に関しては、TEVARがopen surgeryと同じ土俵に上がることは時期尚早の感がある。その理由としては、1)一部の開窓式ステントを除き、現行使用可能なほとんどのTEVAR用ステントグラフトについて弓部大動脈への使用はIFU外使用となること、2) 中枢側landingをzone 1、zone 2に相当するtransverse archに置いた際に、bird beak現象を含むエンドリークのリスクが高いこと、3)上記と同部位の治療における脳梗塞合併率が比較的高いこと、4) 中枢側landingをzone 0に置き、debranchingを行う際に頻度は少ないが急性大動脈解離という重篤な合併症が発生するリスクがあること、5)shaggy aortaの存在下ではワイアリング操作によるアテローム血栓塞栓症を免れないこと等が挙げられる。そのため、遠隔成績の検証を待たずして現行のTEVARによる弓部大動脈瘤治療はsuboptimalであり、第一選択肢の座を占められずにいる。
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