演題

DB-13-1

手術先行

[演者] 長谷川 潔:1
[著者] 大場 大:1, 西岡 裕次郎:1, 山本 訓史:1, 山下 俊:1, 宮田 陽一:1, 中沢 祥子:1, 星川 真由美:1, 吉岡 龍二:1, 進藤 潤一:1, 三瀬 祥弘:1, 有田 淳一:1, 赤松 延久:1, 金子 順一:1, 青木 琢:1, 阪本 良弘:1, 菅原 寧彦:1, 國土 典宏:1
1:東京大学肝胆膵外科

大腸癌肝転移に対する標準治療は外科的切除だが、最近の化学療法の著しい進歩を背景に切除可能であっても、術前に化学療法が先行導入される機会が増えてきている。欧米で報告された周術期化学療法に関するRCTの結果もその傾向を後押ししているようであるが、デザインや結果の解釈に大きな問題があり、日本の臨床現場にそのまま外挿するのは危険である。切除可能肝転移に術前化学療法は本当に有用なのだろうか?通常、術前化学療法の利点は腫瘍条件を改善(ダウンステージング)し、治癒切除率を上げることと、微小転移巣を制御し、再発率を下げることの2点が挙げられるが、当初から切除可能であれば、後者のみの利点に限られ、それを示した確固たるエビデンスはない。むしろ、欠点として化学療法期間中の病勢の増悪と肝機能障害があり、本来は切除できた症例が切除不能においやられるリスクがある。一方、手術先行の方針においては、術中に方針変更される(新規病変や偶発症などにより)少数例を除けば、基本的に治癒切除が得られるはずである。手術先行の欠点としては術後早期に再発するハイリスク症例まで手術してしまう「効率の悪さ」が指摘されているが、これは正しいのだろうか?当科ではこれまで技術的に切除可能であれば、術前化学療法を入れずに即切除する方針を一貫しており、1990年代の有力な抗腫瘍治療法がなかった時代に純粋に切除のみで対応した症例に絞って解析すると、10年生存率は30%であった。うち、1回の切除で10年生存が得られた症例は56%にすぎず、残り44%は何らかの再切除を経て、長期生存を獲得している。初回肝切除後の再発は1年以内が最も多く、長期生存例でも術後早期再発を克服した例が少なからず存在する。術後早期再発は必ずしも治療の失敗を意味しない。よって、術後早期再発を懸念し、化学療法を施行しながら、ハイリスク症例を見極める方針は一見合理的だが、むしろ治癒に持ち込める症例を見逃す可能性がある。さらに、最近我々のグループはRCTによって、大腸癌肝転移切除後のUFT/LV補助療法の再発抑制効果を証明した。同時に本RCTでは化学療法の有害事象が生じやすいとされる肝切除後であっても、UFT/LVは安全に投与可能であることも示した。この結果を考慮し、現時点では切除可能大腸癌肝転移に対しては、即切除し、術後UFT/LV補助療法を追加する治療戦略が合理的と言える。
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