演題

特別ビデオセッション—メスの限界に挑戦した手術—

T4b食道癌に対する手術を中心とした治療戦略

[演者] 土岐 祐一郎:1
[著者] 瀧口 修司:1, 宮田 博志:1, 山崎 誠:1, 黒川 幸典:1, 高橋 剛:1, 宮崎 安弘:1, 森 正樹:1
1:大阪大学消化器外科

ガイドラインではT4b食道癌は化学放射線療法(CRT)の対象であるが、MST8ヶ月、5年生存は10%強と治療成績は不良である。我々は1990年代にCRTでダウンステージが得られれば切除するという方針により50%強の根治切除とMST:18ヶ月、5生率:20%強と若干の改善を報告した。2000年代になり CRTの代わりにFAP(CDDP+5FU+ADM)療法を導入し、ダウンステージが得られれば手術を行い、さもなくば2次治療としてFP-RTを行い、切除の可能性を最大限に追求するという2段階の導入治療を採用した。T4に対するCRTでは通常20%前後の食道穿孔が見られるが、一次治療としてFAP療法を行った場合、食道穿孔は5%ぐらいまで減少し、結果として70%以上の患者に根治切除が可能であった。現在はFAP(奏功率50%)より更に強力なDCF(CDDP+5FU+Docetaxcel)(奏功率70%)を採用している。 T4b食道癌手術の基本コンセプトは大動脈や気管の境界限界の層で剥離を進める、一方で気管支動脈、迷走神経肺枝など温存すべきものは全て温存する、リンパ節の被膜沿いに郭清するのではなく、温存する臓器の境界を剥離し複雑な食道のリンパ流を一括して切除するということである。気管大動脈への直接浸潤の部位においては腫瘍辺縁で温存臓器の境界を露出し、そこを起点に360度全ての方向から攻めるという手術が必要になる。合併切除を必要とする場合もしばしば遭遇する。上縦隔の気管浸潤に対して鎖骨胸骨第1,2肋骨を部分切除する縦隔気管口造設術を採用している。血管神経の解剖を熟知すれば技術的にはさほど困難ではない。出血を予防するために腕頭動脈をくぐらせて気管を挙上すること、大胸筋にて死腔を充填することなどがポイントになる。反回神経沿いのリンパ節転移は容易に気管に浸潤し本術式の適応になることが多い。また、大動脈浸潤については新しい試みとして大動脈ステント挿入し、その後大動脈全層を部分的に切除するという手術を経験した。適応は限られるが今後の発展が期待される術式である。 T4b食道癌は食道気道狭窄や瘻孔などのために予後だけではなくQOLも極めて不良である。手術死亡率が激減した現在、積極的な切除について見直す価値があることを提言したい。
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