演題

DB-8-2

不要

[演者] 進藤 潤一:1
1:虎の門病院消化器外科

拡大肝切除を安全に施行するための新しい工夫として近年、ALPPS(Associated Liver Partition and Portal Vein Ligasion for Staged hepatectomy)が報告され、その有用性と安全性に関する議論が続いている。しかしOncologicalおよびSurgicalな観点からは従来の門脈塞栓術(PVE)で十分対応可能であり、ALPPSは不要であるとの立場から討論を行う。
米国MD Anderson Cancer Centerのデータでは、2011年の全肝切除症例中、PVEを要した症例は12.9%、そのうちPVE後に手術へ進むことができた症例は81.8%であった。過去358例の統計では初回sessionでのPVE成功率は97.8%、合併症発生率3.9%、予定残肝容積(対標準肝容積)はPVE前後で19.5%から29.7% (中央値、p<0.0001) と良好な成績が示されており、予定残肝の肥大が不十分であるために非切除となった症例はむしろ少ない。PVE後に手術に進めなかった理由の内訳は肝内の腫瘍進展によるものが33%、肝外病変の発見が25%、肥大率が不十分とされたものが17%、その他身体状況によるものが25%であった。肝内進展による非切除症例のうち腫瘍が経過中に増大して切除不能とされたケースは少なく、ほとんどは予定残肝内に新規病変ないし転移が生じたものであった。こうした症例に対し、たとえALPPSで急速な残肝肥大をはかって切除に行ったとしても早期再発は必至と予想される。一方、このような術前の観察期間を経て切除適応を判断する従来のPVEのポリシーでは、PVE後に切除に進んだ症例の予後が、up-frontで切除を行った症例の予後と同等であることが大腸癌肝転移症例で報告されている。従って適応がマージナルな症例の真の切除適応を見極めるOncologicalな観点からはPVE後の観察時間は重要な意味を持つと云える。
ALPPSは急速な予定残肝の肥大により切除の安全性を短期間で確保できると考えられているが、肝の十分な肥大を得ながら肝不全をきたす症例が少なからず存在している。これは機能的なシフトが大きさの変化よりも遅れるためであり、切除の安全性は必ずしも肝容積の絶対値だけで予測できない。PVEの場合は予定残肝の肥大速度(Kinetic Growth Rate, KGR)が残肝容積によらず術後肝不全を鋭敏に予測しうることが報告されている。拡大肝切除の安全性は肝容積や肝機能の継時的変化を追い、術後に起こる変化を予測した上で判断すべきであり、術死ゼロを目指すSurgicalな観点からはPVEが確実と思われる。
詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版