演題

DB-8-1

有用

[演者] 田中 邦哉:1
1:帝京大学ちば総合医療センター外科

大量肝切除の際の残肝容量不足を回避する方策として、1990年に門脈塞栓術 (PVE)が報告され、2000年に2期的肝切除が報告された。2期的肝切除ではPVEも同時に施行されることが多く、これら手技の活用により肝手術適応は著しく拡大した。一方で、PVE後から肝手術までの待機期間における遺残腫瘍の増殖、あるいは残存予定肝の容量増大不足による治療非完遂がこれら手技のリスクとされてきた。待機期間は2週から8週程度であり、PVE後の切除完遂率は58% から100%、2期的肝切除では69%から96%と報告されている。この問題点を解消する新たな治療手段として2012年にALPPS手術が報告された。ALPPS手術は、切除予定肝の門脈結紮と同時に予定肝切離面での肝実質の完全離断を加える点が従来のPVE (+2期的切除)と異なる。ALPPS手術の初回から2回目までの待機期間は3日から14日で切除完遂率は95%から100%である。待機期間が短い故に遺残腫瘍の増殖が起こりにくく、待機期間中の残存予定肝容量の増大率もPVEでは元の残存予定肝容量の20% から46%程度であるのに対して、ALPPSは60.5%から102.5%と大きい。ALPPS手術の合併症率、術関連死亡率はやや高率であるが、さらなる切除適応拡大のためには必須な治療戦略と考えられる。自身の経験した主に転移性肝癌治療におけるこれら手技の治療成績を比較すると、PVE単独が37例、PVEと2期的切除の併用が48例であり、ALPPSが11例であった。PVE (+2期切除) 85例の待機期間は平均61.4日 (median, 35.5)で切除完遂率は90.6%であった。一方ALPPS 11例の待機期間は11日 (10.5)で、現在まで全例で切除完遂が可能であった。術前化学療法の併用頻度はPVE (+切除)が65%であるのに対しALPPSは全例施行されており、総ライン数,cycle数ともにALPPSでは2.9ライン,21.2コースとPVE (+切除)の1.65ライン,9.94コースに比較し高率に施行され、より強い肝組織毒性が予想されるにも関わらず、残存予定肝の容量はPVE (+切除)群では297.4±111.4mLが396.4±133.8mLに増大したのに対し、ALPPSでは328.2±65.4mLが493.9±122.1mLに増大し、ALPPSの増大率が高値であった (P<0.05)。遺残腫瘍の増殖能を示すKi67ラベリングインデックスの増加もPVE (+切除)に比較しALPPSで軽度であった。本ディベートではALPPS手術は有用であるといった立場から、ALPPSがPVEより明らかに有利な点、あるいは今後さらなる改良が必要な点を治療経験に基づきながら検討したい。
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