演題

DB-6-1

Full sternotomy

[演者] 柴田 利彦:1
1:大阪市立大学心臓血管外科

僧帽弁形成術の目的は僧帽弁逆流をなくすことである。その目的を完遂することが本質であり、full sternotomyかMICSかという論議はそれを遂行するための手段を論じているにすぎない。「MICSといえども人工心肺を使うし心停止も必要だから、傷が小さいことをのぞけばどこが低侵襲なんだろう」とかつて思っていた。ところがMICSの経験を積み重ねていくと、うまくいったMICSは確かに患者さんの回復も早い。MICSにはリスクのよい若い患者さんを選択しているというバイアスがかかっているのも事実であり、MICSと正中切開とを一概に比較しにくい。MICS弁形成をうまくやるためには二つの要素がある。まずは、MICSで体外循環を安全に確立させ僧帽弁の良好な視野を得ることである。MICSでの視野展開法は正中での視野展開法とはやや異なる点を認識しなければならない。次に弁形成手技をうまく行い逆流をなくすことである。僧帽弁形成術を習得していくなかで、はじめからMICSではじていく外科医はいないであろう。弁形成とはどういうものかというイメージを正中切開手術で作っておくことが肝要である。弁形成のイメージと形成手技とが十分満足できるレベルになってから、MICSに手をだすべきである。複雑な逸脱病変に対してMICSを行うことは当初ないであろうから、対象にする比較的簡単な逸脱に対する弁形成完遂率が95%程度の技量と経験が求められる。MICSでは弁切除縫合が正中に比べてやりにくい。我々は正中切開でloop techniqueによる弁形成を始めたが、この再建方法がMICSに移行するときに大変役立っている。正中切開と同じ手技をMICSで行うだけのことであり、限局した後尖逸脱症例以外の広範囲逸脱症例にMICS弁形成するストレスが低いと感じている。上記のレベルに達するには、少なくとも年間10-20例程度のMICS弁形成がないと安全で完成度の高いMICSへの移行は難しいのではないかと思っている。そのためには、まず正中切開で上手な視野展開を行い、確実な弁形成手技を身につけることが肝要である。逆にいえば、弁形成症例の少ない施設においてMICSに移行するのはハードルが高いのではないかと感じている。まずは正中切開で自分なりの僧帽弁弁形成法を確立することである。「MICSでやったから形成できずに弁置換になってしまった」というのは本末転倒である。
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