演題

非開胸

[演者] 瀬戸 泰之:1
[著者] 森 和彦:1, 山形 幸徳:1, 愛甲 丞:1, 清川 貴志:1, 西田 正人:1, 八木 浩一:1, 山下 裕玄:1, 野村 幸世:1
1:東京大学消化管外科

食道癌根治術において、腫瘍(食道)切除のみならず、リンパ節郭清が重要であることは異論がないところである。食道切除自体は抜去術のように非開胸(非胸腔アプローチ)でも可能である、しかしながら、縦隔リンパ節郭清は頸部や食道裂孔からのアプローチだけでは困難であり、ゆえに胸腔アプローチが必要であった。これまで胸腔アプローチは、開胸、片肺換気麻酔の侵襲的手技を必要としたが、これらの侵襲性を軽減するためVATS, prone positionなどのMIS(minimally invasive surgery)が導入されている。しかしながら、肺炎等の術後合併症の頻度が高いこともいまだ解決しきれてはいない。上記MISでも胸膜切開が必要となるが、切除郭清の対象となる食道、リンパ節は両側胸膜にはさまれた領域に存在しているのであり、本来胸膜切開は不必要のはずである。また、食道癌術後の呼吸機能低下も報告されており、克服すべき課題と考える。手術器具・技術の進歩、発達により、上記の点を克服すべく、根治性を損なわず、「非開胸」で行う食道癌根治術が考案されている。頸部創より上縦隔、腹部より食道裂孔を通じて中下縦隔領域の切除郭清を行うことが「非開胸」の基本的操作となる。その手技詳細は各施設で異なるものと思われるが、我々は頸部創より右側(右反回神経沿い)はopenで、左側は縦隔鏡を用いて、大動脈弓下縁まで、すなわち左反回神経反転部のレベルまで郭清している。中下縦隔は、食道裂孔よりda Vinciを使用して、気管分岐部までの郭清を行うことにより、上中下縦隔の郭清が連続し、かつen block切除および胸膜温存が可能となる。当初、腹部操作は開腹で行っていたが(12例)、現在は腹腔鏡を用い頸部操作と同時に行っている。再建は胃管を後縦隔経路で挙上し、頸部で吻合を行っている(計37例)。適応は術前診断T2までの症例としている。37例において、術後肺炎の発生は認めていない。縦隔における郭清リンパ節個数は平均27個で、通常の開胸症例(143例)27.5個と同等であった。また、術後6月後の呼吸機能を通常の開胸症例と比較したが、VC, FEV1.0の低下は軽減されており、後者においては有意差を認めた(術前比:0.96 vs 0.85)。「非開胸」食道癌手術は今後、根治術として選択肢のひとつとなりうると考えられる。
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