演題

VATS

[演者] 宇山 一朗:1
[著者] 石田 善敬:1, 須田 康一:1, 石川 健:1, 古田 晋平:1, 田中 毅:1, 中内 雅也:1, 梅木 祐介:1, 後藤 愛:1, 松尾 一勲:1, 鈴木 和光:1, 梶原 脩平:1
1:藤田保健衛生大学上部消化管外科

胸部食道癌の内視鏡外科的治療に関して開胸アプローチ(VATS)か非開胸アプローチのいずれを選択するかというディベートにおいて、下記の事象を確認しておく必要がある。通常開胸手術とVATSの比較で術後の呼吸器関連合併症に有意な差はないが、胃管作成の腹部操作を通常開腹手術で行った場合と腹腔鏡手術で行った場合は、術後肺炎の発生率は腹腔鏡群が有意に少なかった。これは、開胸手術もVATSも共に、片肺分離換気下での現象である。つまり、片肺分離換気手術が可能な呼吸機能の症例においては、腹部操作のアプローチが重要である。勿論、片肺分離換気が不可能な症例の場合は非開胸手術しか選択肢がないので今回の議論から除外すべきである。では、片肺分離換気が可能な症例において、VATSか非開胸手術のいずれが優れた術式であるかの議論をする場合に、腹部操作は腹腔鏡アプローチである前提でないと上記事象のため議論が複雑になる。よって今回は、腹部操作は腹腔鏡アプローチであるという前提で議論したい。非開胸手術には下記のような欠点と利点があると考えられる。欠点:1)下中縦隔郭清の際に心嚢を圧排する必要があり循環動態に悪影響を及ぼす、2)頸部アプローチによる上縦隔リンパ節郭清は技術的に難易度が高い、3)出血などの対応が困難である、4)高度進行癌に適応が難しい。利点は両側肺換気下で手術可能であることにつきる。我々の施行している内視鏡食道癌手術は気胸(6~10mmHg)下、両側換気下、腹臥位手術である。両側換気と言っても右胸腔内は気胸のため右肺はある程度虚脱しているので、非開胸手術の両側換気下手術とは異なる。しかし、以前の完全分離片肺換気手術よりは術中術後の呼吸器機能に与える影響は低いと考えられる。その上、心嚢を圧排する必要がほとんどなく、上中下縦隔リンパ節郭清において十分な視野と鉗子の自由度が非開胸手術より良好で、郭清操作が容易であり、かつ高度進行癌にも適応可能である。以上の理由により、気胸下両側換気手術が可能な症例においては非開胸手術よりVATSの方が選択すべき術式と考えられる。ただし、両術式の術後合併症の発生率、長期予後の比較検討が勿論必要であり、症例、癌の進行度に応じた最も優れた術式の選択が重要である。
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