演題

高齢者に対する術後の輸液管理と栄養管理

[演者] 宮田 剛:1
1:岩手県立中央病院消化器外科

臓器機能の低下した高齢者にとって、周術期、手術侵襲による生体内部恒常性破綻は、臓器不全を招き致命的となる。これを予防あるいは是正するための輸液をはじめとした種々の周術期管理が必要になるが、高齢者の病態を把握し、なにが起こり得るのかを想定した上での対策が求められる。神経内分泌のストレス反応系は主に体液の恒常性を維持する目的で作動する。侵害刺激を起点としてADHの分泌、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系が分泌され、体液保持目的の乏尿を来す。しかし加齢に伴いこのうちのアルドステロン系の反応は低下することが多く、それを補うようにADHの分泌がより増すと言われている。このため、腎集合管で水のみの再吸収が為されるため、尿の濃縮化とともに血清ナトリウム濃度の低下が助長される。カテコールアミンとともにストレスホルモンとして最も早い反応を示すADHがこのようにことさらに分泌助長される病態はときとして利尿期の遅れと高度の低ナトリウム血症を引き起こし、意識障害を招くことになる。これを避けるためのポイントを実例に沿って説明する。低ナトリウム血症の鑑別としての尿中ナトリウム濃度の測定、対処方法としての鎮痛、利尿剤の使い方、リハビリテーションなども重要な対策となる。 術後臥床による廃用と代謝亢進による筋蛋白崩壊を防ぐには栄養療法が必要と言われているが、ただ栄養材だけ投与したからといって蛋白合成は十分に促進される訳ではなく、蛋白異化に向かう生体反応の流れを蛋白同化にスイッチする介入としてのリハビリテーションの重要性が示されている。特に活動度の低下した高齢者では離床も遅れがちになるが、今やリハビリテーションを伴わない術後栄養療法は無意味であると言っても過言ではない。投与すべき栄養素の比率や質的量的推奨に替えて、血糖や窒素バランスのモニタリングの重要性を強調することとしたい。病態さえ掴めれば投与すべき栄養剤は現代では豊富であり、適宜選択入手可能である。元気な老人も多い、しかし術前から臥床傾向で低ナトリウムを来しているような本当に細心の管理をすべき高齢者を見極め、適切なモニタリングを行うことが必要と考える。
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