演題

第2部 「日本外科学会臨床研究助成」および「若手外科医のための臨床研究助成」授賞式: Transcriptome解析による胃癌細胞の肝転移巣形成責任分子の同定と治療への応用

[演者] 神田 光郎:1
[著者] 清水 大:1, 小林 大介:1, 田中 千恵:1, 山田 豪:1, 藤井 努:1, 中山 吾郎:1, 杉本 博行:1, 小池 聖彦:1, 野本 周嗣:1, 藤原 道隆:1, 小寺 泰弘:1
1:名古屋大学消化器外科

【背景】胃癌の肝転移は長きにわたり、その不良な予後のため手術適応外とされていた。しかし、肝転移巣切除後の長期生存例も少数ではあるが認められており、肝転移を有する胃癌の治療方略は、現在の胃癌診療におけるトピックスである。とはいえ、手術治療単独では予後の大きな改善が期待できないことは明白であり、個別化治療を可能とする新規分子標的治療薬の開発および悪性度診断マーカーが不可欠である。遊離癌細胞が転移巣を形成する過程は、正常細胞と癌細胞の複雑な相互反応の上に成り立っており、接着分子、蛋白分解酵素、増殖因子、血管新生因子、ケモカインなど多くの分子が関与している。胃癌細胞が肝転移巣として完成されるためには、それを可能とするための原発巣との分子生物学的変化が存在すると考えられる。近年のゲノムワイドな解析により、原発巣と転移巣では遺伝子的背景が異なることが報告されてきた。胃癌肝転移は、同じ消化管腺癌の大腸癌と比して明らかに生物学的悪性度が高く、大腸癌とは全く異なる遺伝子的機序が存在する可能性がある。【目的】我々は次世代シーケンサーを応用した網羅的Transcriptome解析により、胃癌肝転移の成立に寄与する候補分子として「分子A」を同定した。本研究では、「分子A」の機能・発現解析を詳細に行い、同分子が新規分子標的となる可能性について検証していく。【方法】まずin vitro実験では、「分子A」高発現肝転移巣由来胃癌細胞株を用いて、siRNA法によるノックダウン前後の増殖能、浸潤能を評価する。さらに、肝臓の微小環境に関与する主要接着因子、酸化LDL受容体(LOX)、各種増殖因子発現、アポトーシスへの影響を主にWestern blotting法で調べる。胃癌治療のKey drugであるS-1と「分子A」阻害の併用が抗腫瘍効果を発揮するかを調べるため、すでに樹立している5-FU耐性株と親株での「分子A」発現レベルおよびノックダウンによる5-FU感受性の変化を調べる。ついでin vivo実験では、ヌードマウスに胃癌細胞株を門脈内注入して作成した肝転移モデルにおける造腫瘍能を「分子A」のノックダウン前後で比較する。これら機能解析の過程は、本研究から胃癌肝転移の新規分子標的治療の提案を目指すものとなる。さらに、切除検体から得た組織を対象に「分子A」の発現解析を行い、胃癌肝転移の診断・予後予測的マーカーとしての有用性も模索していく。
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