演題

細胞シート工学を利用した血管誘導ヒト肝組織の迅速な自己構築

[演者] 堺 裕輔:1
[著者] 小池 真章子:1, 長谷川 英子:1, 山之内 孝彰:1, 曽山 明彦:1, 日高 匡章:1, 高槻 光寿:1, 黒木 保:1, 江口 晋:1
1:長崎大学移植・消化器外科

【目的】肝移植は肝硬変の重症例や遺伝性肝疾患に対する根治技術の1つであるが、日本でのドナー不足は深刻である。その代替技術の1つとして肝細胞移植が行われているものの、塞栓を考慮した移植肝細胞の量的制限と生着率の低さから依然として肝再生技術として確立されていない。本研究では、細胞シート工学に着目してヒト肝細胞/線維芽細胞複合シートを作製し、低侵襲な皮下において血管誘導肝組織を構築すること目的とした。
【方法】外科的に切除した肝組織の非腫瘍部から、コラゲナーゼ灌流法によりヒト初代肝細胞を調製した。ヒト皮膚由来線維芽細胞(TIG-118細胞)を温度応答性培養皿(UpCell; 細胞シートを作製可能な市販の培養基材)にコンフルエントにし、肝細胞を1.14×105 cells/cm2で播種した(共培養シート)。肝細胞のみを播種した条件をコントロールとした(単独培養シート)。培養4日目に細胞シートを作製し、血管新生に関する増殖因子の産生能や微小構造解析した。さらに、細胞シートを免疫不全マウスの皮下に移植し、移植組織の免疫化学染色や血清中のヒトタンパク質量等を評価した。
【結果】共培養シートは、単独培養シートよりもVEGF、HGF等の産生能が有意に高く(P<0.01)、毛細胆管構造の再構築が観察された。また、共培養シート移植群では、皮下において一列に並んだ肝細胞と線維芽細胞、毛細血管で構成された血管誘導肝組織が構築され、グリコーゲンの貯蔵、アルブミンや第9凝固因子の合成を維持していた。さらに、細胞シート移植2週間後のマウス血清中のヒトアルブミン量は、共培養シート移植群と単独培養シート移植群でそれぞれ2483±909、112±100 ng/mouseであり、共培養シート移植群で有意に高値であった(P<0.01)。ヒトα1-アンチトリプシン量も同様に、有意に高値であった。
【考察】共培養シート移植群では、事前の血管誘導なしに、肝臓様構造と機能を有する血管誘導肝組織を構築した。これは、線維芽細胞による増殖因子等の分泌により迅速に血管が新生され、肝細胞の生着と組織化が促進されたためであると考えられる。
【結語】肝細胞/線維芽細胞複合シートは、皮下における血管誘導肝組織の構築に優れており、良好な肝特異機能を発現した。本技術は、肝移植に代わる新しい肝再生医療ツールとして期待でき、遺伝性肝疾患などに対する治療効果を実証したい。
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