演題

細胞移植による心筋再生療法の開発と推進

[演者] 福嶌 五月:1
[著者] 宮川 繁:1, 戸田 宏一:1, 澤 芳樹:1
1:大阪大学心臓血管外科

重症心不全に対する心臓移植や人工心臓の治療効果は顕著であるものの、適応が限られることが課題である。また、薬剤や呼吸療法など様々な保存的アプローチが研究開発中であるが、大幅に生命予後を改善させる治療は開発されていない。一方、既存の治療と異なるメカニズムにより心機能を改善させる細胞移植を中心とした心筋再生治療が注目を集めている。当科においては過去20年間、心不全に対する再生医学研究を様々な動物モデルを用いて遂行する中で、最も安全性と治療効果の高い治療として自己骨格筋芽細胞シート移植療法を開発し、2006年より臨床研究を推進してきた。現在までに、左室駆出率35%未満の重症心不全患者19例を対象に臨床研究としてこの治療を行ったところ、その半数以上に治療後6ヶ月の時点で、症状・左室駆出率の改善、肺動脈圧の低下など有意な治療効果が確認された。また、シアトル心不全モデルにおいても、治療後に生命予後が延長していることが示された。一方では、治療効果の乏しい症例も散見され、これらは高度左室拡大を呈したより進行した末期心不全症例であった。この自己骨格筋芽細胞シート移植療法においては、血管新生因子を中心とした心保護因子を心筋内にて発現増強させるのが治療効果のメカニズムであり、心筋細胞数を増加させる作用はないことから、顕著に心筋細胞数が減少した末期心不全においては治療効果が乏しいものと考えられた。そこで、iPS細胞由来心筋細胞を用いた心筋再生療法の開発にとりかかった。多施設共同研究により、iPS細胞株が高効率に心筋細胞に分化するプロトコールならびに、これを大量培養し細胞シート化する技術を開発した。この基盤技術を用いてヒトiPS細胞由来心筋細胞シートをブタの慢性心筋梗塞モデルに移植したところ、左室駆出率の改善、細胞移植部位の左室壁運動の向上などの治療効果が確認された。さらに、移植されたiPS細胞由来心筋細胞が宿主心筋と同期して収縮弛緩するという、従来の細胞シート移植とは異なるメカニズムが証明された。現在、培養プロトコールの効率化、最適移植細胞数の決定、他家細胞移植における免疫抑制療法の適正化、造腫瘍性の評価などを行っている。今後、自己骨格筋芽細胞シート移植症例を重ねることによりこの治療のエビデンスを構築するとともに、他家iPS細胞由来心筋細胞シート移植療法を臨床応用するために、臨床研究プロトコールの最適化を行っている。
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