演題

進行再発甲状腺分化癌に対する分子標的薬のベネフィットを最大化するために

[演者] 田原 信:1
1:国立がん研究センター東病院

放射性ヨード治療(RAI)不応になった進行再発甲状腺分化癌の予後は限られる。 甲状腺がんにおける分子生物学的研究により、甲状腺濾胞癌の50%にRASの突然変異が、甲状腺乳頭癌の35〜70% にBRAFシグナルの活性化を誘導する突然変異が、さらに血管内皮増殖因子(VEGF)の発現の増加も認められ、その発現強度は転移リスクと無増悪生存と相関することも報告されている。これらの結果、RAS/RAF/MAPK経路、VEGFRなどを多標的に阻害するチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の開発が甲状腺がんに対して盛んに行われている。 Sorafenibは、VEGFR-1-3, RET, RAF, PDGFRβをターゲットとするTKIである。RAI抵抗性の分化型甲状腺癌を対象としたsorafenibとプラセボとの第Ⅲ相試験(DECITION試験)にて、sorafenibは統計学的有意に約5ヶ月の無増悪生存期間(PFS)中央値を延長した(PFS中央値: placebo群5.8ヶ月vs. sorafenib群10.8ヶ月、HR: 0.55, 95CI : 0.38-0.79, p<0.001)。 Lenvatinibは、VEGFR-1-3, FGFR-1-4, RET, c-KIT, PDGFRαをターゲットとするTKIである。RAI抵抗性の分化型甲状腺癌を対象としたlenvatinibとプラセボとの第Ⅲ相試験(SELECT試験)にて、lenvatinibは統計学的有意に約15ヶ月のPFSを延長した(PFS中央値: placebo群3.6ヶ月vs. sorafenib群18.3ヶ月、HR: 0.21, 95CI : 0.14-0.31, p<0.001)。 甲状腺がんに対するTKIの特徴として、他の癌腫と比べて投与期間が長い(Sorafenib 約10ヶ月、Lenvatinib約14ヶ月)、副作用の頻度が高い、さらに長期投与に伴う副作用・合併症(血管系イベント)などにも注意が必要になる。患者のQOL悪化無く治療継続するには、休止、減量、再開を細やかにする必要がある。したがって、これらTKIのメリットを最大化するには、1)適正な対象:副作用よりも増悪抑制によるメリットの方が大きいと判断される患者、2)チーム医療による細やかな副作用の管理が必須である。症状のない患者に対する適応についてはバイオマーカーの結果を踏まえて述べたい。
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