演題

進行再発甲状腺分化癌に対する分子標的治療

[演者] 安藤 雄一:1
1:名古屋大学化学療法部

分化型甲状腺癌は全甲状腺癌の90%以上を占め、一般に予後良好である。しかし、約5-15%は放射線ヨウ素治療抵抗性となり、その場合の生存期間は2.5年~3.5年とされる。また、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常が多くみられ、乳頭癌ではBRAF変異(45%)やRET再構成(13~43%)、濾胞癌ではRAS変異(30~45%)やPTEN変異(10~15%)が多い。近年、放射線ヨウ素治療抵抗性に対する標準的治療として分子標的治療薬が登場している。ソラフェニブは腫瘍細胞の増殖や血管新生に関与する複数のキナーゼに作用する経口薬である。分化型甲状腺癌患者417例を対象とした第Ⅲ相国際共同臨床試験(DECISION)において、ソラフェニブは無増悪生存期間を有意に延長させ、中央値はプラセボ群 5.8 カ月に対してソラフェニブ群10.8 カ月であった(ハザード比= 0.587; p<0.0001)。すなわち、ソラフェニブ群では病勢進行または死亡リスクがプラセボ群と比較して41%低下したことになる。全生存期間は両群とも中央値に至っておらず、プラセボ群の71%が非盲検下でソラフェニブに移行したこともあり、両群間に統計学的有意差はなかった。また、ソラフェニブ群の奏効率は12.2%、6カ月以上の病勢コントロール率は54.1%であった。主な有害事象として手足の皮膚反応76%(グレード3以上20%)、皮疹50%(同5%)、高血圧41%(同10%)が認められた。なお、BRAF変異やRAS変異は効果予測因子ではなかった。本試験に基づき、ソラフェニブは甲状腺癌に適応拡大されている。一方、同じく複数のキナーゼに作用する経口薬レンバチニブも分化型甲状腺癌患者392例を対象とした第Ⅲ相国際共同臨床試験(SELECT)において無増悪生存期間を有意に延長させた。無増悪生存期間の中央値はプラセボ群 3.6 カ月に対してレンバチニブ群 18.3 カ月であった(ハザード比= 0.21; p<0.0001)。全生存期間は両群間に統計学的有意差はなく、レンバチニブ群の奏効率は64.7%であった。主な有害事象は高血圧68%(グレード3以上42%)、下痢60%(同8%)、蛋白尿31%(同10%)、手足の皮膚反応32%(同3%)であった。本試験の結果に基づき、レンバチニブも甲状腺癌に適応承認される見通しである。
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