演題

直腸癌手術における感染対策

[演者] 齊田 芳久:1
[著者] 榎本 俊行:1, 高林 一浩:1, 中村 陽一:1, 長尾 さやか:1, 渡邊 良平:1, 高橋 亜紗子:1, 竹下 惠美子:1, 渡邉 学:1, 岡本 康:1, 浅井 浩司:1, 桐林 孝治:1, 長尾 二郎:1, 草地 信也:1
1:東邦大学医療センター大橋病院外科

直腸癌術後の感染症は手術部位感染症と遠隔感染症に分類できる。手術部位感染症は切開創感染と臓器/体腔感染、ドレーン感染があり、これらの起因菌は大腸内の常在細菌と皮膚常在細菌である。また、臓器/体腔感染の原因のほとんどは縫合不全であり、消化管と交通があるため、治療目的でいくら広い抗菌スペクトラムの薬剤を用いても無菌にすることは不可能であり、無用な耐性菌の選択を生む危険性が高い。遠隔感染には呼吸器感染、カテーテル感染、尿路感染、抗菌薬関連性腸炎(MRSA腸炎、Clostridium difficile腸炎:CD腸炎)がある。遠隔感染は基本的には外因性感染であり起因菌は病院環境や医療従事者の手指を介した感染である。教室過去10年間の直腸がん手術の成績からみると、切開創感染が多かったが腹腔鏡手術の普及で激減し1%程度になっている。遠隔感染では最近4年間でCD腸炎が急激に増加しており、新たな問題となっている。直腸癌手術の術後感染症では腸内細菌叢を反映して大腸菌、腸球菌、嫌気性菌が多く分離される。そのため一般的に下部消化管手術の術後感染予防抗菌薬は嫌気性菌をも目標とすべきとされてきた。教室ではMRSA腸炎の出現を予防する意味で嫌気性菌に対する抗菌力を持たないCTMを用いてきたが、特に近年腹腔鏡手術が増加し切開創感染が減少してから嫌気性菌に対する抗菌力を持つ薬剤は不要と考えている。一方で、直腸がん手術に限らず、周術期感染症ではCD腸炎が徐々に増加している。教室では2008年から徐々に増加している。CD腸炎の対策はアルコール含有の刷り込み式手指消毒薬では効果がないため、従来の手指衛生を中心とした感染対策では不十分である。教室では、CD腸炎を予防するために周術期の抗菌薬の選択基準を変え、胆汁移行性が高く抗腸球菌作用や抗嫌気性菌作用のある薬剤の選択順位を遅らせることにより、2014年にはCD腸炎を経験していない。腹腔鏡手術の増加で切開創感染は激減しているが、一方で、CD腸炎は増加傾向にある。従来、直腸手術の術後感染予防の抗菌薬は嫌気性菌も目標とすべきとされてきたが、切開創感染が激減している状況では、CD腸炎の予防も考慮して嫌気性菌を目標としない抗菌薬の選択も考えられる。
詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版