演題

SP-5-4

「混合診療」導入の是非: 「神学論争」から「実用化ハイウェイ」へ

[演者] 鈴木 康裕:1
1:厚生労働省

通常は保険診療と保険外診療を1医療機関で同時的に行うことはできない(その場合は全額自己負担になる)が,それは,基本的に保険診療が行われるべき有効性・安全性が認められた医療と,評価がされていないし,保険診療に適していないかもしれない医療を自由に組み合わせると,高度に専門的な生命・健康にかかわる判断を自ら行うには限界がある患者への不利益となる恐れや,主として保険料によって賄われている保険給付費が無制限に拡大する恐れがあるからである。 こうした中,いわゆる「混合診療」,厚生労働省的にいうと「保険外併用療養」とは,先進医療(評価療養)や差額ベッド代(選択療養)など,一定の認められた保険外診療であれば,その部分のみは自己負担となるが,保険診療との組み合わせを認めるというものである。 他方,こうした先進医療の拡大が研究の進歩に追いついていない,または,2つの異なる医療機関で保険医療部分と保険外部分を別途行えば,片方の保険医療部分は認められるのに,同時に一つの医療機関で行うとすべてが自己負担となるのは合理的ではない,とする意見もある。 こうした議論は,えてして「「混合診療」は是か非か」という,白黒の決着を求める二分法となりがちだが,演者は,このような「神学論争」は百害あって一利なしだと思っている。 「混合診療」の全面解禁は,まともな専門家であれば誰でもわかるように,副作用が大きすぎる。たとえば,美容整形外科の手術に関する入院も保険給付対象となるし,医師個人が有効と信じていても,全く科学的根拠が明らかでない治療法も,診断に関しては保険給付対象となり,保険医療費も大きく拡大してしまう。 他方,こうした保険外併用療法をまったく取り入れなければ,医学の進歩のブレーキとなるし,すでにかなりの部分は併用療法として取り入れられているのが実態だ。 残された課題は,安全性や有効性に留意しながら,適切なスピードで導入するためには,どのような仕組み,費用構造,何かあった場合の手当,全面保険収載への道筋が必要なのかということであり,「全面解禁すべきだ」「いや,全面解禁は危険だ」という過去何度も繰り返されてきたやりとりは,本来解決すべき課題から目を背けさせ,解決までの労力や速度を阻害しているというしかない。 今後の議論が,冷静な出口論を踏まえた生産的なものであって欲しいと願うばかりである。
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