演題

SP-5-3

混合診療導入の是非

[演者] 遠藤 久夫:1
1:学習院大学経済学部

−保険収載される仕組みの担保が重要−混合診療禁止の目的は、自由診療における患者自己負担を多くして自由診療の普及を抑制することにある。混合診療が禁止されていると、新薬(機器)・新技術などが保険収載されていないと実質的に高価格になるため、薬事承認・保険収載のプロセスに乗せざるを得なくなる。これで質の担保とアクセスの公平性を確保することになる。一方で、薬事承認や保険収載のプロセスに時間がかかるためドラッグ(デバイス)・ラグが生ずる、制度が硬直的すぎて、患者の利便性が損なわれる、といった指摘もある。このため、特定の内容について混合診療を認める保険外併用療養費が設けられている。この制度は、新薬等へのアクセスを短縮する目的で先進医療や治験の段階で混合診療を認める「評価療養」と、差額ベッドなど患者の利便性を向上させる目的で適用される「選定療養」とで構成される。混合診療が禁止されているため、海外で使用可能でも国内未承認薬は事実上使用できないとして、患者団体が混合診療の解禁を求めたこともある。しかし、混合診療の禁止は新薬・新技術を保険適用に誘導する仕組みである。混合診療が全面解禁されたとすると、外国企業は日本で販売する際どのような行動をとるであろうか。治験には莫大なコストがかかる。保険収載されれば企業の要望より低い薬価が設定されかねない。自由診療のままで販売したいという誘惑にかられないだろうか。画期性の高い、類似薬のない製品ほど保険収載を行わない可能性が出てくる。つまり、混合診療の解禁は一見、新薬・新技術へのアクセスの改善をもたらすように思えるが、中期的にはアクセスの低下をもたらしかねない。かつて混合診療の解禁を主張した患者団体が、最近では解禁に慎重姿勢を取っている。これは、このことを理解されたからではないか。最近は全面解禁ではなく保険外併用療養費の要件緩和を求める流れに変わってきている。規制改革会議が提案した「選択療養(仮称)」は現行の先進医療(評価療養)の要件緩和を求めたものである。申請者を医療機関から患者へ変える、対象患者を限定しないなど、要件の緩和を求めている。専門的な視点から見て質が担保されるのであれば問題はないだろう。問題は新薬、新技術が保険収載へつながる仕組みがどの程度担保されているかである。今後詳細が詰められると思うが、その点を注視していきたい。
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