演題

移植困難症例に対する手技的工夫:無肝期Veno-venous bypass使用による循環安定化の試み

[演者] 八木 孝仁:1
[著者] 篠浦 先:1, 楳田 祐三:1, 吉田 龍一:1, 信岡 大輔:1, 内海 方嗣:1, 杭瀨 崇:1, 高木 弘誠:1, 藤原 俊義:2
1:岡山大学病院肝胆膵外科, 2:岡山大学消化器外科

脳死肝移植に対する体外循環管理の歴史は古く1983 Starzlらによって無肝期のVeno-venous bypass(VVB)という形で導入され、1990年代初頭まで、特に米国ではConventional OLTの必須の手技であった。IVC温存の全肝移植技術はCalneにはじまりPiggyback technique (Tzakisら)や latero-lateral cavo-caval technique (Belghiti ら)の開発によってVVB の必要性は低くなり、1990年代後半には世界の主要な移植センターにおいて急速に使用されなくなった。その大きな理由は無肝期が延長することと手技的煩雑さのために麻酔科を含めた移植チームの習熟が必要であるという2点である。しかしBusqueらが指摘しているように尾状葉とIVC、あるいは肝静脈周囲や下大静脈靱帯に強い炎症性癒着がある場合にIVC温存に固執するのはむしろ危険との指摘もある。「方法」われわれの施設では①下大静脈周囲の大量出血が懸念され、②門脈圧が高い症例が多い、③上半身hypovolemia下半身鬱血のあるhigh risk症例が多いなどの理由で、ほぼ全例の脳死肝移植症例、ならびにIVC cross clampを必要とする部分肝移植症例には積極的に VVBを用いており、これを供覧する。(症例1)生体肝移植後グラフト機能不全:10年前妊娠後肝不全で左葉グラフト移植をうけた。その後刊静脈狭窄にステント挿入するも閉塞し、腎不全(維持透析)を合併、脳死肝腎同時移植待機患者となった。主門脈枝からSMVまで門脈血栓が認められ、①大量出血への対処、②上下半身血液不均等の解消、③門脈血栓対策による無肝期の延長への対策としてVVBの早期導入と肝動脈先行再建で対処した。(症例2)Budd-Chiari症候群:肝部下大静脈狭窄および肝静脈閉塞:病変の性格上横隔膜レベル以下の下大静脈の全切除が必須であり、症例1と同様の理由から早期のVVB導入をおこなった。IVC再建は肝下部IVCと20㎜PTFEによるInverted composite graftを用いて右房流入路とnative IVC graftの後壁を吻合し、前壁開口部に左葉グラフトの共通管を吻合した。「結果」両者とも回復は順調で移植後2ヶ月で退院した。「結語」VVB導入は移植チームの習熟が必要であり、その意味でも上記条件の症例に対して日常的に使用しており、これに伴う合併症は経験していない。とくに術中死リスクの高い上下半身血液不均等症例でのVVBの有用性は揺るがないものと考えている。
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